MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『オーケストラ!』 80点

2010-11-17 23:54:38 | goo映画レビュー

オーケストラ!

2009年/フランス

ネタバレ

2つの‘オーケストラ’

総合★★★★☆ 80

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 原題『Le Concert(=コンサート)』とあるように、この作品はラストのコンサートシーンにたどり着くまでの主人公のアンドレイ・フィリポフを初めとする人々の葛藤が描かれているという点で『奇跡のシンフォニー』(カーステン・シェリダン監督 2007年)と通じるものがあり、原題は尊重されるべきではあるのだが、では邦題の‘オーケストラ’が悪いのかとなると一概にそうとも言いきれない。
 そもそも主人公のアンドレイ・フィリポフがパリに行けた理由は、KGBに所属しているイヴァン・ガヴリーロフもこの機に乗じてパリで開かれる共産党集会に出席したいためだった。
 しかしイヴァンが出席したパリの集会は30年前とは比べものにならないほど閑散としていた。他方、30年前にコンサートの途中でKGBに妨害されて中断を余儀なくされて以来、沈黙を守っていた指揮者のアンドレイ・フィリポフが絶好の機会を捉えてタクトを振るうパリで催されたコンサートには多くの観客が集っている。
 つまり主義主張の正しさが必ずしも人を引きつけるとは限らず、長い間、姿を隠していても人を魅了し続けるものもあるというアイロニーが描かれているのであり、言い換えるのならば、‘コンサート’というタイトルが正しいことは間違いない(=主義主張は正しい)としても、映画というものはオーケストラと同じように微妙な変化、例えば、アンドレイ・フィリポフが指揮をとるオーケストラにソリストのアンヌ=マリー・ジャケが加わるような変化が予測不可能な効果をもたらすこともあり、ここではタイトルを‘オーケストラ’とみなすことで2つの‘オーケストラ’の皮肉なコントラストを認めるべきであろう。


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