MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『顔』

2016-03-24 00:32:50 | goo映画レビュー

原題:『顔』
監督:阪本順治
脚本:阪本順治/宇野イサム
撮影:笠松則通
出演:藤山直美/佐藤浩市/豊川悦司/大楠道代/國村隼/牧瀬里穂/渡辺美佐子/岸部一徳
2000年/日本

タイトルになっている「顔」の所有者について

 当初はタイトルになっている「顔」が誰の顔なのか分からなかった。ストーリーの流れで勘案するならばこの場合の「顔」は藤山直美が演じる主人公の吉村正子の顔であろうし、実際に正子は妹の吉村由香里を殺した容疑で全国に指名手配のビラが配られており、さらには藤山直美の顔の渡辺直美ばりのインパクトも手伝って正子の顔と認識されるであろう。
 しかしながらそれにしては正子の顔には変化が乏しい。確かに逃走途中で自転車から落ちて地面に打ちつけて顔を腫らしたり、ホステスとして働くようになると化粧を施すなど顔に多少の変化はあるものの、ストーリーに影響をもたらすほどのものではないのである。
 母親の吉村常子が亡くなるまで正子は家に引きこもった状態の生活で、母親が営むクリーニング店の二階で洋服のかけはぎの仕事をしていた。正子の密かな楽しみは、例えば、洋服の柄の動物を見ながら外で動物たちとピクニックしている自分を想像したり、テレビを見たり『カトリーヌの涙』という少女マンガを読んだりすることで、正子はいわゆる「腐女子」なのである。
 家を飛び出した正子は男に強姦されたり、勤め先のラブホテルの花田英一社長が自殺したりスナック「律子」の女将の弟の中上洋行が殺されたりとロクなことがないのであるが、それでも見つけた唯一の希望は生まれ変わったら会いたいと思わせた池田彰の存在である。つまりタイトルの「顔」とは正子の妄想をかき立てた池田彰の「イケメン」なのである。


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