MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『死闘の伝説』

2018-06-25 21:44:06 | goo映画レビュー

原題:『死闘の伝説』
監督:木下恵介
脚本:木下恵介
撮影:楠田浩之
出演:毛利菊枝/田中絹代/加藤剛/岩下志麻/加藤嘉/加賀まりこ/石黒達也/菅原文太
1963年/日本

本物の「マカロニ・ウェスタン」について

 冒頭とラストのカラーパートのシーンは現在(1963年)の北海道の村の様子が映される。脱輪したトラックを村人たちが協力して元に戻すのである。そこへ挟まれるモノクロの映像では村の有力者の鷹森金兵衛とその息子の剛一と、剛一と一度は縁談の話がまとまったものの、兵役から戻って来た秀行がかつて剛一の部隊に所属しており戦場における剛一の残虐非道を目の当たりにしていた秀行の告発で縁談を断った妹の黄枝子の園部家との間で確執が生じるのだが、他の村人たちはよそ者の園部家よりも鷹森家に加担し、園部家と園部家と親しくしていた清水信太郎と娘の百合は畑を荒らされたりして嫌がらせを受けるようになる。
 秀行が仙台に引っ越し先を探しに行っている間に、黄枝子が剛一に襲われ、たまたま黄枝子を迎えに来ていた百合が剛一の背後から石で頭を殴ったのだが、剛一が死んでしまったことから村人たちが警官の制止を振り切って暴徒化する。
 秀行の弟の範雄が殴り殺され、祖母の梅乃が銃殺され、信太郎も銃殺されてしまう。帰郷した秀行が現場に急行したものの、百合も銃殺されてしまい、秀行が倒れている百合を抱え起こすシーンから再びカラーパートになり、脱輪したトラックを元に戻した村人たちが立ち去って本作は終わるのである。まるでいがみ合っていた過去を忘れてしまっているようなのだが、「死闘」は太平洋戦争が終わる二日前、すでに広島や長崎に原爆を落とされ、完全な負け戦さの中で憂さを晴らすための「差別」が原因として描かれている。
 木下忠司の「口琴(Jew's Harp)」が効果的に使われている本作はイタリアのネオレアリズモの雰囲気からクライマックスは西部劇の様相を呈し、つまりこれが本当の「マカロニ・ウェスタン」なのかもしれない。


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