MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『戦場のなでしこ』

2018-06-26 00:35:20 | goo映画レビュー

原題:『戦場のなでしこ』
監督:石井輝男
脚本:川内康範/石井輝男
撮影:吉田重業
出演:小畑絹子/三ツ矢歌子/星輝美/大空真弓/城実穂/瀬戸麗子/田原知佐子/宇津井健
1959年/日本

 本物の「なみだの操」について

 1945年8月15日の敗戦でソ連軍の占領下で長春に滞留を強いられていた日本人の婦女子は髪を短くさせられていた。そんな中でも赤十字に所属する第八救護所の堀喜代子を婦長とする看護婦たちは人種に関係なく怪我人の治療に従事しており、時には銃弾が飛び交う中でも手術をしなければならない厳しい状況に置かれている。撃たれて死の床にある同僚の大北照子のためにお菓子を買ってきて「旅愁」を歌うのは小田まゆみを演じた大空真弓である。
 そんな時に、総務課長の張建竜を通じて進駐軍の命令で5人の看護婦を別の病院に応援のために派遣するように言われ、一カ月の期限で行ったのだがその後彼女たちから何の音沙汰もないまま、再びさらに看護婦を一週間派遣するように命令が来て、堀や医師の吉成健次が不審に思い始める。
 その頃、派遣された荒井秀子や田崎京子や村瀬友子たちは通訳の徳永長に騙されてロシア軍の慰安婦として捕えられており、健次を恋人に持つ秀子を除いた他の看護婦たちはロシアの軍人たちになぶり者にされてしまう。このような状況を打開するために京子が逃走を図るのであるが、途中で銃で撃たれた京子は救護所にたどり着いたものの、助けを求めて間もなく亡くなってしまうのである。
 
京子のメッセージから堀は派遣隊の真相解明に乗り出し、自分が明日の6時までに戻らなかったら死んだものと思ってくれと残りの看護婦たちに言い残して出かけていくのであるが、張や徳がロシア軍に捕まり事件が解決して7時過ぎになってやっと戻ってこられた堀や秀子や健次たちが見たものは純潔を守ろうとして集団自決した看護婦たちがきれいに床に横たわっている姿で、秀子に貰った口紅を塗って亡くなっていたのはまゆみだった。
 純潔を守るために集団自決するというストーリー展開が決して荒唐無稽でないように思えるのは、1973年に殿さまキングスがリリースした「なみだの操」という曲が大ヒットしているからである。
 本来ならば傑作といってもいいはずの本作は致命的な演出ミスがある。秀子たちを助けようと、馬に乗ってロシア軍の駐屯地へ赴いた健次は、何故か急に気が変わって秀子を残して再び馬に乗って去っていってしまい、さらに帰りは平原が雪原になっておりストーリー展開も場面設定もメチャクチャなのである。何故このような不要なシーンが残されてしまったのか勘案するならば、上映時間78分の本作においてこのシーンをカットしてしまうと70分を切ってしまい短編映画扱いされるし、かと言ってストーリーを整えるだけの追加の撮影時間も取れなかったからであろう。

殿さまキングスさん『なみだの操』の歌詞
ナミダノミサオ
words by センケカズヤ
music by サイキマサオ
Performed by トノサマキングス


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