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MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ブルーアワーにぶっ飛ばす』

2020-02-14 12:02:50 | goo映画レビュー

原題:『ブルーアワーにぶっ飛ばす』
監督:箱田優子
脚本:箱田優子
撮影:近藤龍人
出演:夏帆/シム・ウンギョン/渡辺大知/黒田大輔/上杉美風/伊藤紗莉/でんでん/南果歩
2019年/日本

「楽園」の正体について

 『楽園』(瀬々敬久監督 2019年)を観た後だったために、都会の生活に疲れた主人公が田舎に帰ってどのようになるのか興味を持った。
 主人公は30歳のCMディレクターで澄夫と結婚しているが同僚の富樫晃と不倫もしている砂田夕佳である。澄夫は優男で物足りず、富樫は肝心の仕事の時には頼りにならず、夕佳のフラストレーションは溜まる一方で、そんな時に入院している祖母を見舞いに、故郷の茨城県に帰ろうかどうしようか迷っている時に、友人の清浦あさ美に急き立てられて一緒に車で行くことになる。
 しかしネタバレになるが、清浦あさ美は砂田夕佳の「分身」で家族とは接しても決して地域の人たちと密接に交わることはないのだから、帰り着いた場所というのは故郷というよりも正にブルーアワーと呼ばれるつかの間の「理想の楽園」でしかなく、結局、砂田は都会に戻るしかないのではないだろうか。
 主人公の砂田を演じた夏帆の演技が素晴らしいことは言うまでもないが、出来れば砂田が地元で撮った映像を編集したものを見てみたかった。そこに何等かの「答え」があるはずだからである。


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『楽園』

2020-02-14 00:34:20 | goo映画レビュー

原題:『楽園』
監督:瀬々敬久
脚本:瀬々敬久
撮影:鍋島淳裕
出演:綾野剛/杉咲花/村上虹郎/片岡礼子/黒沢あすか/石橋静河/根岸季衣/柄本明/佐藤浩市
2019年/日本

都会の別名と化す「楽園」について

 最初の舞台は平成16年で、アンガールズが売れ始めた頃である。主人公の中村豪士の母親の中村洋子が無断で偽のブランド品を販売していたという理由で、ヤクザにボコボコにされているのだが、豪士は見ているだけで、暫くして助けを呼びにいったのだが、そこの村の世話人のような藤木五郎はそのヤクザを止めに入るものの、警察沙汰にしないのは中村親子が東南アジア出身で豪士も7歳の頃に来日してきて日本語が堪能ではないからであろう。
 同じ頃、小学生の湯川紡は友達の愛華と一緒に遊んでいたものの、喧嘩をしてしまいY字路で別れて帰ったまま愛華は行方不明になり、藤木五郎の孫ということもあって村の大事件へと発展する。最後に会っていた紡が大人たちに色々と訊かれるのだが、近くに停まっていた車が白か青かよく憶えていないのは、当時、豪士が所有していた白い車と、都会から戻って来たばかりの田中善次郎が飼うことになる愛犬のレオを捨てにきた男が青い車に乗っていたからである。豪士が愛華の後を付けていく様子を紡は見ていたが、最後にどうなったかまでは見ておらず赤いランドセルは見つかったが愛華本人は見つからないままだった。
 だから12年後、パンクした自転車をこいでいる紡の背後から車で来た人物が豪士だった時、紡は身の危険を感じたはずだが、豪士はなけなしの金で壊れた笛を弁償する好青年だったのだが、再び少女が行方不明になり、豪士が疑われることになる。当時、豪士と一緒に手をつなぎながら川辺を探していた男が、豪士は足を滑らせて男を引っ張ったにも関わらず、赤いランドセルを見つけさせないようにしたと言いだしたことがきっかけで、豪士は食堂に入ると亭主や客を追い出して自ら灯油をかぶりライターで火をつけて焼身自殺してしまうのである。
 病気で妻の紀子を亡くした善次郎は地元に帰って養蜂を営んでいた。蜂蜜を使って村おこしを企画し、藤木を含む村人たちにも同意を得ていたはずなのだが、勝手に手続きを始めたことに反発を買ってしまい、さらに村の男たちが密かに憧れている久子と交際していることを疑われ、そもそも一度村を捨てた人間という烙印を押されていた善次郎は村八分にされてしまうのである。
 その後の善次郎の凶行が唐突で面食らうが、結局、幸せなのは東京に逃れてきた紡と、紡の後を追ってきて白血病になっても5年生存率が50%でも地元に戻らない野上広呂と、実は東京で暮らしていた愛華くらいで、「楽園」とは人間関係の濃密さに堪えられなかった田舎者たちが集う「都会」の別名と思われても仕方がない。


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