原題:『閉鎖病棟 - それぞれの朝 -』
監督:平山秀幸
脚本:平山秀幸
撮影:柴崎幸三
出演:笑福亭鶴瓶/綾野剛/小松菜奈/坂東龍汰/平岩紙/渋川清彦/小林聡美/佐藤もみじ
2019年/日本
問題を抱えている病院を舞台にすることについて
本作が何を伝えたかったのか勘案するならば、死刑執行の失敗で下半身麻痺で生きなければならなくなった主人公の梶木秀丸も、幻聴に囚われながらも自ら入院して自分の可能性を模索している塚本中弥も、母親の再婚相手に性的虐待を受けており、病院から飛び降り自殺を試みたものの助かってしまった島崎由紀も、それでも残りの人生を生きていかなければならない生き様を描きたかったと思うのだが、そのような患者以上に問題があるのは彼らが入っている長野県にある六王子病院ではないだろうか。
秀丸が院内で再び同じ入院患者の重宗を殺めた理由は、重宗が由紀を暴行したためなのだが、重宗は普段から素行が悪く、だから必ず職員が重宗のそばに付いていたはずで、何故か重宗が由紀を暴行する時には職員が付いておらず、結果的に秀丸の手を汚させることになったのである。そもそも秀丸が由紀に事件現場となる陶芸小屋に行かせたはずなのだが、由紀が戻ってこないことに疑問を持たず、翌日になって由紀が院内にいないことに気がついたということにも問題がある。
由紀が一度両親によって家に連れ戻される際にも、父親の島崎伸夫が入院患者に暴行を働いているのだが、病院側がそんな父親と一緒に由紀をそのまま帰らせてしまうのも違和感が残る。
例えば、冒頭で由紀がたまたま乗っていた秀丸とエレベーターで病院の屋上に向かい、屋上に着いてエレベーターのドアが開いて、由紀が飛び出した時にエレベーターのドアはなかなか閉まらなかったのだが、由紀が車椅子に乗っている女性患者をエレベーターに乗って送る時にはエレベーターのドアがすぐ閉まり、要するに設定が甘いのである。