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MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

ゴッホのもう一つの「大喧嘩」

2019-11-22 00:56:38 | 美術

 フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)とポール・ゴーギャン(Paul Gauguin)の「大喧嘩」はかなり有名な話で、その直後にゴッホが自ら左耳を切断して、自画像としても残している。


(『耳を包帯でくるんだ自画像(Self-portrait with Bandaged Ear)』1889年)

 現在、上野の森美術館で催されている『ゴッホ展』でもう一つの「大喧嘩」を知った。それは弟のテオを介して知り合った画家のアントン・ファン・ラッパルト(Anthon van Rappard)との間に起こったものである。


(『ジャガイモを食べる人々(The Potato Eaters)』1885年)

 当時、渾身の力作と自負していた『ジャガイモを食べる人々』は、弟のテオにもそれほど評価されていなかったのだが、本作の石版画を送ったラッパルトからは容赦のない批判の手紙を受け取る。


(『ジャガイモを食べる人々(The Potato Eaters)』石版画 1885年4月)

「あんな作品は本気で描いたものじゃないという僕の意見には君も賛成だろう......どうして君は、一切を、あのように表面的に見るんだい?......背景にいる女のコケティッシュな小さい手は、全く真実と懸け離れているよ......また、右側にいる男はどうして、膝や腹や肺を持つことを許されないのか? そんなものは背中についているのか? またどうして彼の腕は一ヤードも短くなければいけないのか? どうして鼻が半分欠けていなければいけないのか? また、左手の女は、鼻の代りに、端に小さな立方体の付いた煙草のパイプの軸を付けていなければならないのか?」(『ファン・ゴッホの生涯 上』 スティーヴン・ネイフ/グレゴリー・ホワイト・スミス共著 松田和也訳 国書刊行会 p.469 2016.10.30)

 その後のゴッホの作品を見ている私たちから見るならば、ゴッホにしては寧ろ「普通」の作品のように見えるのだが、ラッパルトが属していたであろう「ハーグ派」は「バルビゾン派」の流れを汲むもので、全体的にフォーカスが甘く、『ジャガイモを食べる人々』のように顔の表情を細かく描写することがなかったために不評を買ったように思う。


(『煉瓦工場の労働者たち(Arbeiders op de steenbakkerij Ruimzicht)』1885年)


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