MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

友好を阻害する日本の表現の不自由について

2019-11-26 00:25:08 | 美術


(2019年11月21日付毎日新聞朝刊)

 日本・オーストリアの友好150周年を記念して、ウィーンの美術館「ミュージアム・クオーター」で9月下旬から開かれている美術展「ジャパン・アンリミテッド」について、日本の外務省が先月末、記念事業としての公認を取り消した。会田誠の「国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ」やブブ・ド・ラ・マドレーヌと嶋田美子の「1945」が日本の首相や昭和天皇などを題材にしたためにツイッターなどで「反日」だと批判されて外務省が怯んだようである。
 キュレーターのマルチェロ・ファラベゴリによれば、今回の美術展では両国が友好150周年で関係が深まっている時期であることを考え、日本では通常、表現しにくいテーマを扱った作品を集めようと考えたらしい。
 ある意味、キュレーターの想像を超えた表現の不自由さを現代日本に見いだされてしまった感がある。オーストリア政府が75%出資するミュージアム・クオーターは、日本の対応を受けて「表現の自由は守らなければならない。我々は美術家のアイデアを表現する場を提供する義務がある」との声明を出し、墺日協会のディータード・レオポルド会長も「日本の決定は表現の自由を侵害している。我々がこの決定によって起こりうる問題を克服できることを願っている」とするコメントを発表した。
 実際に作品を観ていないために、記事を読んだ範囲内でのコメントしかできないが、会田誠の作品は日本の総理大臣と名乗る男が勝手に国際会議で演説している様子を面白おかしく表現しているだけだし、ブブ・ド・ラ・マドレーヌと嶋田美子の共同作品は昭和天皇とマッカーサーの写真の昭和天皇の立ち位置に女性がいるだけであり、「反日」でさえないのである。
 もはや4、5人くらいで騒げば官僚をコントロールすることができるチョロさで、今回の騒動で表現の自由に関して日本の恥を世界に晒してしまった感しかない。今後、表現を不自由にしたまま日本政府はどのようにして外国から信用を得られるようにするのだろうか?


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