MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『セールスマン』

2017-11-04 01:39:40 | goo映画レビュー

原題:『Forušande‎』
監督:アスガー・ファルハディ
脚本:アスガー・ファルハディ
撮影:ホセイン・ジャファリアン
出演:シャハブ・ホセイニ/タラネ・アリドゥスティ/ババク・カリミ/ミナ・サダティ
2016年/イラン・フランス

人種間の問題よりも根の深い男女間の問題について

 本作のタイトルになっている「セールスマン」とは誰なのか勘案するならば、トラックを使って夜に行商をしている男になると思うが、主人公のエマッドと妻のラナがメインで出演している、アーサー・ミラー原作の舞台『セールスマンの死』の主人公のウィリィ・ローマンが自分の死でもって発生する保険金で家族に償うことでアメリカ人の生きざまを示したとするならば、本作のセールスマンは自分の死でもって家族の誇りを守るイラン人の生きざまを示したと言えるだろう。
 しかし本作でもっとも気になる設定は、エマッドとラナに子供がいないという点である。教師をしているエマッドは子供たちに囲まれた毎日を送ってはいるし、二人が所属している劇団のメンバーにも子持ちはいるため子供が遊びに家に来ることはある。しかし自分の寝顔を写真に撮った生徒を叱責した際にエマッドは生徒に父親がいないことを知らなかったし、ラナを襲った犯人の残したお金で食材を買ったためにエマッドはラナが用意したパスタを捨てさせて遊びに来て2人と一緒に食事をしていた子供と気まずい雰囲気を作ってしまうのである。この、子供がいないという生活の認識の違いがエマッドとラナとの犯人に対する感情の温度差に表れているように思うのである。


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