原題:『銭のとれる男』
監督:村野鐵太郎
脚本:石松愛弘
撮影:小林節雄
出演:田宮二郎/藤巻潤/佐藤慶/高毬子/江波杏子/水谷良重/山本耕一/目黒幸子
1966年/日本
まさに怪我による「派手」な功名について
主人公の佐川次郎は昼はレーサーとして夜はジャズバンド「ブルー・フィンガーズ」の看板トランぺッターとして活躍していた。バンマスの岡俊介の指導でトランペットの腕を磨き、自動車整備工からレーサーにまで押し上がった佐川はやがて周囲が自分がお金になるから利用しているのではないかと疑いだす。
そんな時、有閑マダムで未亡人の荒木静枝との浮気を疑った双見陽子の差し金でバイクに乗った男たちに襲われた佐川は右手の甲にヒビが入ってしまい自動車の運転やトランペットの演奏に支障が生じるようになり、ライバルの渋谷信行との差しの対決で負けてしまい、岡には演奏に文句を言われてバンドを脱退してしまう。
行き先も決めずにクルマでたどり着いた先は浜松のガソリンスタンドだった。そこで佐川は大田久美子と遇い、そこで三ヵ月ほど働くことになる。ある日、トランペットのマウスピースで練習中に、これからベトナムに派兵されるという黒人のアメリカ軍人と偶然再会して励まされる。彼は以前佐川のライブを聴きに来ていた常連客だったのである。そして佐川が東京に戻ろうとした矢先にトラックに撥ねられて亡くなった久美子が実は佐川の大ファンでレコードや雑誌の切り抜きなどを久美子の兄に見せてもらう。つまり佐川はここで金銭目的ではなく自分を慕ってくれる人がいることを知るのである。
東京に戻った佐川は借金を背負い場末のキャバレーでピアノを弾いていた岡と再びバンドを組み、盟友のエンジニアの青木慎吾の協力を再び得るとチャンピオンレースで渋谷を抜いて優勝するのである。
一見いい話に見えるが、最初から佐川が手の怪我が治るまで安静にしていればここまでこじれる話ではないと思う。