MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『PARKS パークス』

2017-11-10 00:22:06 | goo映画レビュー

原題:『PARKS パークス』
監督:瀬田なつき
脚本:瀬田なつき
撮影:佐々木靖之
出演:橋本愛/永野芽郁/染谷将太/森岡龍/石橋静河/麻田浩/長尾寧音/佐野史郎
2017年/日本

物事が生じる場所と「伝統」について

 作品冒頭から驚かされる。「Prologue」という字幕の後、主人公の大学生の純が吉祥寺の井の頭公園を自転車で滑走しながら「この物語は桜で始めたい」「でも、まだ始まってないけど」「物語は、もうすぐ始まる」と観客に語りかけ、本作がメタフィクションであることを宣言する。
 純のアパートを訪ねてきたのは50年前に同じ部屋に父親の晋平が住んでいたと言う高校生のハルで、2人が晋平が残していた昔の恋人の佐知子との手紙と写真を頼りに足跡をたどっていくと佐知子の孫のトキオと遭遇する。トキオが見つけ出したオープンリールのテープに残されていた晋平と佐知子のオリジナル曲を今風にアレンジして2017年5月に開催される「吉祥寺グッド・ミュージック・フェスティバル」で披露することになる。
 ところがこのオリジナル曲の出だしのフレーズが「君と歌いたい曲がある/それはこんな曲で/僕らの物語は/この公園から始まる」というもので、音がノイズで途切れて分からなかったために純が書き加えた後半も「パークミュージック/終わらないストーリー」と歌われここもメタフィクションなのである。ところが実際にフェスティバルで披露しようとした矢先、純以外のメンバーたちが食中毒を患い、純とトキオだけでステージに立ったものの不完全なまま終わってしまうのだが、それ以前に純はハルが完成した曲を気に入っていないことが気がかりで、挫折を味わうことになる。
 そのハルは父親に関する小説を書こうとしていたのであるが、純と喧嘩をして部屋を出て行ったハルが残していた小説の原稿は本作のストーリーがそのまま書かれており最後は純がその小説を読んでいるところで終わっている。
 まるで本作は物事の「始原」を探求しているように見える。おそらくそれは始まりと終わりと、また始まりが繋がっている場所であろうが、例えば、結局素性不明なハルが最後に完成した自分の小説『PARKS』を読んでいる場所が何処なのか分からないように捉えられるものではないである。しかしそこ、つまり本作では井の頭公園になるが、物事が生じる「始原」となるその場所は間違いなく誰もがワクワクする楽しい場所である。今年の邦画でベストだと個人的には思う。


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