MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『50年後のボクたちは』

2017-11-19 00:44:05 | goo映画レビュー

原題:『Tschick』
監督:ファティ・アキン
脚本:ラース・フーブリヒ
撮影:ライナー・クラウスマン
出演:トリスタン・ゲーベル/アナンド・バトビレグ・チョローンバータル/メルセデス・ミュラー
2016年/ドイツ

「イージー・ライダー」たちの成長物語について

 本作を『スタンド・バイ・ミー』(ロブ・ライナー監督 1986年)と比較する論調が目立つのだが、寧ろハーレーダビッドソンをラーダ・ニーヴァに変えた中学生版の『イージー・ライダー』(デニス・ホッパー監督 1969年)のように見える。だからといっていわゆるアメリカンニューシネマのような挫折の物語ではない。確かに主人公で2002年5月14日生まれのマイク・クリンゲンベルクはクラスの人気者のタチアナの精密な似顔絵を描いていたにも関わらずフラれるという挫折は味わっているが、転校生でユダヤ系ロマのアンドレイ・チチャチョフとの旅は、途中でイザ・シュミットとの出会いを経て、クライマックスで『イージー・ライダー』のラストのようなシーンを迎える。ところがマイクとチックは相手のトラック運転手の「自滅」により難を逃れる。
 そこで2人は別れ、夏休みを終えて一皮むけたマイクはタチアナの心を掴むのであるが、14歳で「裁き」を経て既に大人になっていたマイクはチックとイザと50年後の7月28日の「約束の地(Promised Land)」を胸に生きていくのである。
 本作のテーマ曲として流れるリチャード・クレイダーマン(Richard Clayderman)の「渚のアデリーヌ(Ballade pour Adeline)」はたまたまディーゼル車に残されていたカセットテープに収録されていたものだが、後にチックの性癖を暗示させ、さらにエンドロールでステレオラブ(Stereolab)の「フレンチ・ディスコ(French Disko)」のカヴァーヴァージョンを流す監督のセンスの良さを感じさせる。


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