原題:『ミックス。』
監督:石川淳一
脚本:古沢良太
撮影:佐光朗
出演:新垣結衣/瑛太/瀬戸康史/永野芽郁/広末涼子/遠藤憲一/田中美佐子/真木よう子
2017年/日本
「ミックス不足」の人間関係について
「ロマンティック・コメディ」を批評することに意味があるのかどうか分からないが、「コメディ(人生劇)」と称している割りには人間関係の希薄さが気になる。
例えば、作品冒頭で主人公の富田多満子が帰省のために乗った電車の中で、遠くから女子中学生たちを凝視していた萩原久が黙ったまま彼女たちに近づき、彼女たちの向かい側の席についたのを不審に思った多満子が酔ったまま萩原に近づき一騒動起きる。後に萩原が女子中学生たちに近づいた理由が、別れた妻の聖子の連れ子のしおりが通っている学校と同じ制服を着ていたからというものなのだが、それならば何故萩原はすぐに中学生たちにさくらのことを訊かなかったのか。
当初、多満子と交際していた江島晃彦は多満子と別れて新入社員の小笠原愛莉と交際するようになる。たまたま同じレストランで一緒になった時、多満子からプレゼントされた、ラケットが刺繍されたマフラーの悪口を愛莉にしていた江島の言葉を聞いた多満子は絶望したはずなのだが、その後愛莉と別れた江島に声をかけられた多満子が江島の誘いにのることが理解できないし、元プロボクサーの萩原に誤解で殴られた、聖子の上司で今の夫が喜んで萩原の試合に応援しに来ていることも理解に苦しむ。
これらはあくまでも一部だが、このような人間関係のユルさがストーリーの力強さを殺いで「ロマンティック・コメディ」という予定調和に流れていっているように感じるのである。それは多満子が一番強い絆で結ばれていたはずの母親の華子を中学生の時に亡くしたためなのか?