原題:『ちょっと今から仕事やめてくる』
監督:成島出
脚本:成島出/多和田久美
撮影:藤澤順一
出演:工藤阿須加/福士蒼汰/黒木華/小池栄子/吉田鋼太郎/池田成志/森口瑤子
2017年/日本
百害あって一利なしの「夢物語」について
2016年7月頃、ブラック企業の営業職に就いていた主人公の青山隆は厳しいノルマと月150時間を超える残業で心が折れて三宅坂駅のホームに進入してくる電車に体が持っていかれそうになった瞬間に、幼なじみの「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。
しかし本物の幼なじみの「ヤマモト」はニューヨークにおり、そのことを問いただすと偽の「ヤマモト」はあっさりと別人であることを認め、関西のノリで何となく付き合うようになり、その後は、隆と会社社長の山上守と上司の五十嵐美紀とのこじれた関係と、「ヤマモト」の正体が徐々に描かれることになる。
原作に沿ったストーリーまでは良かったのであるが、映画オリジナルのラストの展開は納得しかねる。隆は「ヤマモト」が暮らしているバヌアツ共和国まで行ってボランティアから始めて一緒に暮らすというのである。これではいわゆる「自分探し」というオカルトまがいの怪しいエコロジーである。隆の「正しい振る舞い」は父親が営むブドウ園の手伝いであろう。何でも外国に行けば「自分」が見つかるわけではなく、こういう時こそ家族の元に戻って一から始めるべきなのである。こんな「夢物語」では隆と同じ境遇で苦しんでいる人に何の役にも立たないであろう。