原題:『Minnie and Moskowitz』
監督:ジョン・カサヴェテス
脚本:ジョン・カサヴェテス
撮影:アーサー・J・オニッツ/アルリック・エデンス/マイケル・D・マルグリーズ
出演:ジーナ・ローランズ/シーモア・カッセル/ヴァル・エイヴァリー/エルジー・エイムス
1971年/アメリカ
映画的にはならない燃え上がる愛の「狂気さ」について
主人公でレストランの駐車場で客の車の管理をするアルバイトをしていたシーモア・モスコウィッツとロサンゼルス・カウンティ美術館の学芸員であるミニー・ムーアの出会いは突然だった。ミニーは自宅で浮気相手と密会した翌日に、友人のフローレンスに紹介された男と食事を共にしたものの、男の機嫌が悪くなり男から駐車場で暴力を受けていた時にシーモアに助けられたのであるが、シーモアとの関係も決して順調とは言えない。
終始男女の喧嘩が描かれる本作を退屈せずに観る際の重要なポイントは「ハンフリー・ボガート」であろう。シーモアは映画館で『マルタの鷹』(ジョン・ヒューストン監督 1941年)を観ており、サム・スペードを演じたハンフリー・ボガートに「初めて会ったときから、運命の人だと思っていた」と告白するブリジッド・オショーネシーを演じたメアリー・アスターの言葉をまるで自分が言われたように受け止める。
一方、ミニーはフローレンスと『カサブランカ』(マイケル・カーティス監督 1942年)を観た後に、ハンフリー・ボガートのような男性の「理想像」が映画によって実在すると自分たちは思い込まされていると悲観している。「ハンフリー・ボガート」を巡るシーモアとミニーの対照的な価値観が2人を翻弄するのである。
出会って4日で結婚を決める2人の前に立ちはだかった「最後の壁」がマザコンの2人の母親であるのだが、無事結婚式までたどり着く。しかしその時の神父がとる奇妙な行動の意味は理解できなかった。