MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『トレインスポッティング』

2017-04-24 00:06:36 | goo映画レビュー

原題:『Trainspotting』
監督:ダニー・ボイル
脚本:ジョン・ホッジ
撮影:ブライアン・テュファーノ
出演:ユアン・マクレガー/ケリー・マクドナルド/ユエン・ブレムナー/ロバート・カーライル
1996年/イギリス

「善悪の彼岸」について

 主人公のマーク・レントンは当初、平凡な生き方よりも、「誠実で真実あふれる麻薬の習慣」を選んだ麻薬常習者で、未成年のダイアンと関係を持ち、万引きで逮捕されたりする。一度は真っ当な人生を送ろうと不動産屋に就職するのであるが、仲間との関係を断つことができずに、再び麻薬常習者として生きていく。しかし麻薬取引で大金を手に入れた後でも、仲間の中で気性が一番激しく喧嘩っ早いフランシス・ベグビーがパブで客と無意味な喧嘩を始めている様子を見ている内に嫌気がさし、翌日早朝、仲間が眠っている間に、大金の入ったカバンを持って逃げ出すのである。
 本作が傑作と呼ばれる所以は、ラストシーンに尽きると思う。笑顔でカメラに向かって歩いてくるマークは安定した普通の生活を送ると宣言するのである。麻薬常用者であり、厭きるほどに散々悪いことをした挙句、悪い仲間たちを裏切りあぶく銭を手にするような最も質の悪い男が「一般人」と同様に健全な生活を送ることにして、やがてマークの顔がぼけてきて「匿名」になるのだから、善悪の区別がつかなくなるというアイロニーが秀逸なのである。


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