MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『暗黒女子』

2017-04-04 20:29:20 | goo映画レビュー

原題:『暗黒女子』
監督:耶雲哉治
脚本:岡田麿里
撮影:中山光一
出演:飯豊まりえ/清水富美加/平祐奈/清野菜名/玉城ティナ/小島梨里杏/千葉雄大/升毅
2017年/日本

「スズラン」と「パウンド」の微妙な関係について

 セレブ家族の女子高生たちが通う聖母マリア女子高等学院に入学した二谷美礼の家庭は決して裕福ではなく、学校内では浮いた存在になってしまっていたのであるが、愛読書のエズラ・パウンド(Ezra Pound)の詩集を読んでいたところに、学院の経営者の娘だった白石いつみに声をかけられ、文学サロンが開かれる部屋に通されると、いつみ自身がW.B.イェイツやT.S.エリオットよりもパウンドが好きだと言い、パウンドの『ヒュー・セルウィン・モーバリー(Hugh Selwyn Mauberley)』の希少本を借りて文学サークルに入会することになる。
 史実として、編集者のパウンドはイェイツやエリオットの仕事のサポートをし、そのおかげもあってイェイツは1923年に、エリオットは1948年にノーベル文学賞を受賞するのであるが、パウンド自身は受賞していない。
 そのことを踏まえてここで気になる場面は、各々が書いた小説を発表するたびに出てくる学院でのイースターのチャリティーバザーのシーンである。文学サークルではパウンドケーキ(Pound cake)を提供して毎回完売しているのである。彼女たちの文学サロンが崩壊した原因は「スズラン(君影草、Muguet)」に拘り過ぎ「パウンド」を疎かにしたからではなかったのか。


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