MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『十九歳』

2017-04-07 00:03:23 | goo映画レビュー

原題:『十九歳』
監督:高野舞
脚本:青山ななみ
撮影:宮崎康仁
出演:岸井ゆきの/眞島秀和/霧島れいか/小島藤子/丘みつ子
2017年/日本

自前の「オリジナルストーリー」に勝手に傷つく19歳について

 主人公で春日野美術大学の1年生の祐村嬉子は母親の浅子と共に、祖父の墓参りのために母親の実家に帰省し、祖母の花江と久しぶりに再会するのであるが、そこに祖父の元教え子で今は大学の教員をしており近隣の昆虫を研究するために滞在していた昆虫学者の青馬昇と出会う。嬉子は大学の友人の吉岡かおりのボーイフレンドの話に引きずられ、青馬に40代前半の「ぷんぷんと漂う独り身の匂い」を感じ、美しい昆虫標本を制作するように自分の耳たぶにも針を刺して欲しいと頼むのであるが、これは初体験の暗示であろう。
 10月になって嬉子は第48回春美賞の銅賞を受賞し、青馬が学校まで観に来たのであるが、母親に不吉な花として嫌われていたヒガンバナを描いていた嬉子が振り向くと、そこには妻と幼い子供を連れた青馬がいたのである。ヒガンバナを描くために使われていた赤い絵の具の滴りは、嬉子の心から流れる「血」ではなかっただろうか。
 翌年、20歳になった嬉子は、あれほど嫌っていた母親と同じ轍を踏むように一緒にビールを飲みながら列車に乗って再び帰省するシーンで終わるのであるが、文学的なセリフも効いたなかなかよく出来た脚本だと思う。


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