MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ダイナマイトどんどん』

2015-11-27 00:18:03 | goo映画レビュー

原題:『ダイナマイトどんどん』
監督:岡本喜八
脚本:井手雅人/古田求
撮影:村井博
出演:菅原文太/宮下順子/北大路欣也/嵐寛寿郎/金子信雄/岸田森/フランキー堺
1978年/日本

「ぶっ壊れた」野球映画の意図について

 本作が「野球映画」であるかどうかは微妙なところで、主人公の遠賀川の加助は野球経験が無いにも関わらず、いつの間にか「岡源組ダイナマイト」の4番を任されており、クライマックスの「橋伝組カンニバルス」との決勝戦もデッドボールの応酬から乱闘に発展し、バックネット裏から観戦していた米軍司令官に「This is not baseball. This is murder.(これは野球ではなく殺し合いだ)」と言われる始末である。
 しかしさすがアメリカ人で、これは慧眼というべきであろう。そもそも昭和25年の盛夏、小倉を中心としたヤクザ組織の抗争のエスカレートを防ぐために、北九州方面米軍司令官の指導の下に「民主的な喧嘩」として野球の試合が催されたのであり、組員たちは本気で野球などする気はないのである。
 ここでラストの五味徳右衛門の思い出話しを思い出してみよう。昭和19年の夏、プロ野球のセネタースとイーグルスの優勝を賭けた最後の一戦で、9回裏、セネタースのピッチャーだった五味はイーグルスの4番打者の榊原をバッターに迎えていた。1対〇で一塁にランナーを抱えた五味はここでホームランを打たれるとサヨナラ負けとなる状況なのだが、五味は敢えて榊原に打ちやすい球を投げてホームランを打たれる。この試合の後、榊原が出征することを五味は知っていたからである。不幸にも榊原はレイテ沖で戦死するのであるが、ここまで聞いた加助は自分が橘銀次の「魔球」を打てた理由が分かる。
 その時、橋伝組から決闘の申し込みを受けた岡源組はその申し込みを受けることにする。2組は残骸の中で落ち合うと、一緒に別の場所へと歩いていく。自分たちを沖縄の強制労働に駆りだした相手こそ彼らの本当の「対戦相手」だったのである。


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