原題:『Everest』
監督:バルタザール・コルマウクル
脚本:ウィリアム・ニコルソン/サイモン・ボーファイ
撮影:サルヴァトーレ・トティーノ
出演:ジェイソン・クラーク/ジョシュ・ブローリン/ジョン・ホークス/ロビン・ライト
2015年/アメリカ
「そこに山があるから」という真意について
本作は1996年に起こったエベレスト大量遭難を描いたものである。既にテレビ映画として『エベレスト 死の彷徨(Into Thin Air: Death on Everest)』(ロバート・マーコウィッツ監督 1997年)が製作されているが、本格的な映画化は初めてである。
天候の予想は正確だったのだが、登頂の途中でロープが斜面に装備されていなかったり、用意されていた酸素ボンベに酸素がなかったり、さらには筆頭ガイドのロブ・ホールが顧客のダグ・ハンセンのために14時下山予定を遅らせたなど様々な原因が重なって大量の遭難を招いたことが丁寧に描かれ、なおかつロープの整備不良や酸素ボンベに酸素がなかった原因を敢えて問題にしなかったところに描写の客観性が保たれているように思う。雪山と3Dの相性も悪くはなく十分に迫力は感じられて、ここには『ミケランジェロ・プロジェクト』(ジョージ・クルーニー監督 2014年)にはなかった2つの要素が共にある。
何故山に登るのかというお馴染みの問いに対して国籍に関係なく誰もが「そこに山があるから」と答えているところが面白いが、正確を期するなら、理由はそれぞれあるのだろうが彼らは「地上」に居場所を見いだせなかったのだと思う。