MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ナイトクローラー』

2015-11-16 00:47:16 | goo映画レビュー

原題:『Nightcrawler』
監督:ダン・ギルロイ
脚本:ダン・ギルロイ
撮影:ロバート・エルスウィット
出演:ジェイク・ギレンホール/レネ・ルッソ/リズ・アーメッド/ビル・パクストン
2014年/アメリカ

「同情」と「悲劇」の相関関係について

 工事現場などの備品の窃盗などで糊口を凌んでいた主人公のルー・ブルームに転機が訪れたのは、たまたま通りかかった事故現場で見かけた、凄惨な映像をテレビ局に売り込む報道スクープ専門のパパラッチたちだった。安いビデオカメラと警察無線受信機を購入して見よう見まねで始めたルーは、ローカル局のディレクターで、他局との視聴率競走に奔走していたニナ・ロミナと利害が一致し、独占的に映像を提供することになるのだが、ただ事件を撮ることだけでは飽き足らず、死体が「映える」ように動かしてみたり、警察が到着する前に、ある一家の殺害現場を撮ったり、さらには事件が起こる瞬間を撮るために犯人と警察官が遭遇するように策略し、ついには仕事のパートナーとして雇ったリックが殺されるように仕掛ける。「一流」のパパラッチとしてルーが、より多くの視聴者の「同情」を買うために「悲劇」の度合いを増幅させるという倒錯したアイロニーが上手く描かれている。
 ところで雇われる前にリックが観ていたテレビには『ダニー・ケイの黒いキツネ(The Court Jester)』(ノーマン・パナマ/メルヴィン・フランク監督 1956年)という作品が映っているのであるが、この作品は興行的に大失敗したコメディ映画として有名らしく、さらには本国よりも日本で初めに上映されているようであるが、日本ではDVDはリリースされておらず、とにかくいろいろなネタの宝庫なのであるが、とりあえずここで指摘しておきたいことは、原題「The Court Jester」を本作の内容を鑑みながら訳すと「裏町の路地の道化師」となり、まさしく「ナイトクローラー」なのである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする