現在、東京の新宿にある損保ジャパン東郷青児美術館で「モーリス・ユトリロ展」
が催されている。全作品日本初公開とあってたくさんの人が訪れていた。ユトリロ
の作品を通して見てみると、意外かもしれないがアメリカの有名な画家である
ジャン=ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)の作風を彷彿とさせる。2人
とも独学で絵を学んでいる“ストリート出身”の画家という共通項があり、ユトリロは
画材としてよく厚紙を使っているのだが、その理由は金銭的な問題かもしれない。
モーリス・ユトリロ(Maurice Utrillo)は若い頃からアルコール依存症のせいなのか
彼の作品には出来不出来の差が激しいのだが、私の考えでは上の作品のように
ストリートの輪郭がはっきり描かれている作品が出来が良いように見える。晩年の
作品には描線のシャープさが失われていて衰えは隠しきれていないと思う。
もう一つモーリス・ユトリロの作品の特徴は上の作品のように2組のカップルと1人
の人物を組み合わせて描くことが多々あるということである。ユトリロの作品の
ほとんどが風景画である理由は、逆に言うならばユトリロは人物を描けなかった
のだと思うのだが、それでも敢えてこのような組み合わせで風景の中に人物を
描く理由が私には謎のまま残っている。1883年生まれで1955年に亡くなった
ユトリロは極めてグラフィカルなモダンアートの画家だと思う。