いよいよ、「唐箕(トウミ)」を庭に出してメンテナンスを行う。唐箕は中国で「風扇車」と呼ばれそれが江戸時代に伝わり元禄以降普及した。稲作が機械化された後においても、しかも戦後しばらくでも使われていた優れものだ。電動だが同じ形をした金属製のものもいまだに販売されている。近所からいただいたこの唐箕も戦後しばらく大切に使われていたようで致命的なダメージがないのがありがたい。
手回しのファンには字が刻印されている(豊橋製?)が読めない。ゴミが付着しているので金だわしで除去する。このハンドルの奥の「起風胴」のなかに4枚の木製の送風羽根があった。
てっぺんの漏斗から穀物を投入することから作業は始まるが、きょうは何しろごみ取りと小破修理に徹する。漏斗の板には「福門」(笑門来福?)と墨守され、上に書いてある字は読み取れない。その裏側には「福」の一字が大書きされていた。このパターンはいずれの唐箕と同じデザインだ。
漏斗に投入された穀物は送風によって重い実は、右の第一樋(第一口)に、軽い実は第二樋(第二口)に落ちるはずだ。それ以外の殻やゴミは左先端の「吹出し口」から機外に出される。板が薄くて華奢な感じで心配にもなる。
さすがに木製カーブの部分は何度か修理の後もあり、そこは接着剤と細い釘で補修する。板の幅が細いうえに薄いのでやはり割れてしまっていた箇所が少なくない。それでもこれだけの技術を実現する匠の技に感心する。
今回の作品は旧来の木工に新時代の工学技術を取り入れた鍛冶がコラボする良き時代の製品の佇まいが伝わります。
クランクの回転がそのまま扇車の回転となる時代から歯車を使って扇車を増速して風量と風速を増やしている。
かみ合っている長さが長い内歯車を採用して高歯と呼ばれる(すくなくともそのように見える)歯の形状で滑らかに回るコンパクトな構成にまとめています。
工学的に確立した歯型かどうかは分かりませんがかなりの知識をもった設計者がいて、それを鋳造で形を作りヤスリで整える職人たちの腕が生み出した製品ですね。
回転の中心から吸い込み円周側から吐出する風扇車の原理は現在では材質も変わりシロッコファンとなってさらに小型で高性能になりエアコンや武兵衛さんの車のヒーターなどの送風にも使われています。
技術の変遷とその背景に見える人達の活躍と苦労は老生のような傍観者にも何がしかの思いを誘います。
暖かくなったらぜひ現物を見せてください。
(いや、某ウィルスがおさまってからですね。街中はいやでも不特定多数の人との接触は避けられません。日本でも都会になるほどパンデミックもどきが起きる危険性は高そうです)
桜を見る会春野版を開催のとき無料でご招待します。もちろん公費ではありません。そのときぜひ、100年近く前の匠の鼻息ににあってみませんか。
ブラック・ブラボーから伝言です。
「機会がありましたら是非直接軸を回す同じサイズの唐箕も手に入れて並べての展示を期待いたします。
武兵衛さんのライフワークにもつながりますね」
白ブラ・・・もとい!ホワイト・ブラボーより