山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

『火怨』/辺境に真実あり

2014-04-23 20:46:40 | 読書
 東北で活躍の作家高橋克彦の『火怨(カエン)/北の燿星アテルイ』(上下)を読み終わる。
 奈良時代のヤマトが強力な統一国家建設のとき、東北の蝦夷への侵略の物語だ。
 蝦夷は貴族からすれば人間でないと差別されていた。
 749年に多賀城近くで大量の金があることを発見して以来、ヤマトの蝦夷侵略は本格化する。
 東北にとっては祖国防衛戦争となる。
 100年かけてもなかなか手中にできないなか、坂上田村麻呂の登場で終止符が打たれる。

        
 蝦夷はアテルイという懐深い指導者の下で数万の官軍相手にゲリラ戦や地勢を生かした戦術で負けを知らないほどだった。
 しかし犠牲はじわじわと広まっていく。
 
 歴史は勝ち組に都合の良いように伝わるのが代の常だ。
 東北の忍耐はこんな歴史の痕跡を噛み締めてきた強さでもある。

                        
 後世の東北の平穏のためにアテルイは官軍に自らの首を晒しに行く。
 権力闘争に敗れた物部氏が東北に逃れ蝦夷を支援していたのも見どころだ。
 
 日本の本当のルーツは東北にあるのではないか、という思いがつのる。
 朝鮮の影響をもつ権力は出雲を打破し、ヤマトを形成する。
 それ以来、今日の日本の出自はいまだかわっていない。

     
 東北に消えた群団はその後どこに定着したのだろうか。
 大河ドラマでは決して扱わない歴史というものがある。
 こうして歴史の闇に封じ込める現状に、高橋克彦は困難な発掘と想像力でスポットを当てたところが凄い。
                     (講談社文庫、2002年10月)
  

        

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