先日、知り合いが出演しているミュージカルを見に行く。会場の緞帳は、鮎・茶畑・山並・森林・花・川など地域をデザインした見事な作品だ。間もなくその緞帳が開幕される。今回の原作は赤川次郎の絵本。劇団四季はそれをミュージカルにして1000回以上の公演に成功している。
演出・脚本はパリジェンヌをめざしていた地元出身の松井茉未さん。「劇団限界集落」のネーミングはいかにも自虐的なイメージがするが、それを逆手に取った希望のミュージカルを目指している。地元出身者も移住者もともに希望を創り出そうという空気が舞台から発散される。出演者もスタッフも素人でオール春野町というのが魅力だ。
夏から練習してきた出演者は、幼児も若者も高齢者もいる理想的な縦割り集団だ。昔はそれが家族の単位だった。現在は核家族となったが、そのうえに単身者が急速に増えてきている。そこには、孤独な人間のため息が聞こえてくる。そんな状態にした政治の力のむなしさを感じる。そういう現実を嘆くのではなく、そこから希望を見つけ産み出していく空間を共有しようというのがここの舞台にはあった。
「生と死、愛・友情」といった重厚なテーマが爽やかに展開していった。それは主人公役の地元中学3年生の女生徒のはつらつパワーによるものが大きい。それを松井さんの演出力で発揮されたのだと思う。それに、ミュージカルにはなくてはならないピアノ伴奏の岡本さんの的確な演奏も目立った。それらを温かく支えてきた春野文化センターの応援も、指定管理者となった民間力の柔軟さが発揮されている。「限界」を突破した出演者はきっと次も挑戦するに違いない。(画像は、天竜区ツイッターwebから)