活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

タイムマシンは、オートバイ

2008-10-04 02:31:19 | Weblog
週末に、所要があって母校を訪れた。

前に来たのは、もう何年振りだろう?

あの頃と同じように、バイクで向かう。
もう何年も通っていない道を、記憶を頼りに夕闇の中を走る。


やがて…。
母校最寄の駅に到着。
いつもバイクを止めていたスペースは、フェンスがしっかりと立てられて
駐輪できなくなっている。

踏み切りを越え、正門へと向かう坂へバイクを向ける。

下校時間と重なったため、学生がやたらと多い。

見知った顔がそこここから出てきそうな、そんな不思議な感慨もあるが、
それよりも、当然のことながら激変した街並みが、少し心に痛い。

何とかバイクを止められるスペースを見つけて、バイクを降りる。

ゆっくりと、周りを見渡しながら坂を上っていく。

「シャモニ」も、「白い館」も、「蓮」も…。
当時行きつけだった喫茶店は、全て無くなっている。


でも、よく見ると、往時の面影を残しているお店もチラホラ。

正門前の講義ノートを売っていた店も、おお、そのまま残っているではないか。


正門は、大改修…というか、すっかり建て替えられて、昔を偲ぶよすがも無い。

正門横には、立派な総合学生会館が新設されている。

そこが、本日の目的地。
その向こうには、自分が根城にしていた経商学舎が有る筈だが、
今日はここまで。

用事を済ませた後、ふとロビーにある全校の俯瞰模型を眺める。

円形図書館は残っているが、グランドは既に無い。
(もっとも、これは僕が在籍中に、総合図書館に変わっていたが)

クラブハウスも、学食も、生協も…。

まだそのままに有るのだろうか?
それとも、すっかり様変わりしてしまったのだろうか?


敢えて足を向けることもせず、僕は大学を後にする。
踵を返しさま、あの頃彼女とよく待ち合わせをした場所が、視野を掠める。


いい。
今は、いい。
過去を振り返って思い出に耽るには、まだ早い。


坂を降り、バイクのところに戻る。
歩き慣れた下り坂の向こうには、まるで昔の愛車が待っていてくれているようだ。

が。
現実は、当然ながら、あの頃とは違う今の相棒が、闇の中に静かに佇んでいる。


身支度を整え、エンジンをかける。
アイドリングが、静かに体を包み込む。

クラッチを握り、ギアをローに蹴り込めば、
過去から未来へと、僕とバイクは静かに滑り出していく。


(付記)
当時乗っていた愛車は、会社に入った後に同僚に売ってしまった。
一緒に北海道やいろんなところを周った、僕に走る喜びを教えて
くれた奴だった。

数年前、ひょんなことから、そいつが友人のところで眠っている
ことを知った。

同僚が寮を出るときに、その友人が譲り受けたのだとか…。

レストアしようとして、今はまだカバーの下、ガレージで眠って
いるらしい。

いつか、また…。
あいつに出会える日がくるのだろうか。
そして、あいつのエンジンに火を入れ、あの鼓動を感じる時も
くるのだろうか。

そんな楽しみもあるから、人生は捨てたもんじゃない。

(この稿、了)
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