記:永田和宏(歌人・細胞生物学者)
2010年1月4日(月) 日本経済新聞夕刊 7面らいふより
コラムタイトル:プロムナード
サブタイトル:モグラの雪隠茸
時折。
こういうコラムに出会うと、心底ほっとする。
氏の周辺で起きた、何気ない出来事を切り口にして。
思わぬ方向へと話が発展していく。
ほうほう。ふうん。と思って読み進めながらも、肩に力が入る
ことも特に無い。
そのくせ。
読み終えたときには。
日常の雑事とは、全く関係の無い世界の話しに思えることが、
実はどこかで繋がりを持っているという緩やかな連帯感を
味わうことも出来るという、優れコラムである。
冒頭は、氏のご自宅の庭の生ゴミ処理用のコンポストについて。
よく畑の脇などにも置いてある、先が少しすぼまった円筒形をしている
生ゴミ分解用の装置である。
夏の頃は。
どんどん上からゴミを供給しても、あっという間に分解してくれた
その装置の分解性能が。
冷え込みとともに、かなり低下してきた。
そういった観察で、コラムは幕を開ける。
そもそも。
コンポストは、生ゴミを分解して、土に戻す環境循環型の装置である。
その装置の機能は、微生物がその任を担っている。
そこから、話はモグラと茸(きのこ)に発展する。
なぜに、微生物からこの組み合わせが?とお思いの諸兄へ。
解説しよう。
茸は、別名自然界の掃除屋と呼ばれているらしい。
そして。
ナガエノスギダケという茸。
別名を、なんとモグラノ雪隠茸というらしい。
その謂れと言えば、この茸の生えている地下には、必ずモグラの
トイレがあるからだそうである。
※ 図版は、写真:奈良教育大学 自然教育センターニュース
せせらぎ 52号より
この茸が、モグラの排泄物の中の尿素やアンモニアを分解して
土に還すという働きをしてくれるのだとか。
モグラは、巣穴がきれいになり。
茸は、栄養素を吸収し。
ということで。
この茸とモグラの共生関係は、今日もどこかの森の中で密やかに、
でもしっかりと繋がっているのだろう。
生ゴミのコンポストから始まって。
微生物。
キノコ。
そして、モグラへとバトンタッチが続いたことで。
様々なものが、様々な形で繋がりをもっているという、言葉にすれば
当たり前なんだけど、なんだかしみじみと感じいることの出来る思いを
胸にすることができた。
今日は、いい夢が見れそうだ。
(この稿、了)
(付記)
この。
モグラと茸の関係について、専門に研究しているのが、本コラムでも
取り上げられている相良直彦・京都大学名誉教授。
全く。
学問の種と言うものは、尽きることが無いなあと思う。
世の中。
関心を持つ心と。
感心する心。
両者があれば。
終生、退屈と言う語彙とは無縁で居られることだろう。
そう、しみじみと思う。
茸に魅かれて。
茸を追い続けて、京都大学の名誉教授にまでなる。
いい話ではないか。
(まあ、茸の研究でなられたのかどうかまでは不明だが)
2010年1月4日(月) 日本経済新聞夕刊 7面らいふより
コラムタイトル:プロムナード
サブタイトル:モグラの雪隠茸
時折。
こういうコラムに出会うと、心底ほっとする。
氏の周辺で起きた、何気ない出来事を切り口にして。
思わぬ方向へと話が発展していく。
ほうほう。ふうん。と思って読み進めながらも、肩に力が入る
ことも特に無い。
そのくせ。
読み終えたときには。
日常の雑事とは、全く関係の無い世界の話しに思えることが、
実はどこかで繋がりを持っているという緩やかな連帯感を
味わうことも出来るという、優れコラムである。
冒頭は、氏のご自宅の庭の生ゴミ処理用のコンポストについて。
よく畑の脇などにも置いてある、先が少しすぼまった円筒形をしている
生ゴミ分解用の装置である。
夏の頃は。
どんどん上からゴミを供給しても、あっという間に分解してくれた
その装置の分解性能が。
冷え込みとともに、かなり低下してきた。
そういった観察で、コラムは幕を開ける。
そもそも。
コンポストは、生ゴミを分解して、土に戻す環境循環型の装置である。
その装置の機能は、微生物がその任を担っている。
そこから、話はモグラと茸(きのこ)に発展する。
なぜに、微生物からこの組み合わせが?とお思いの諸兄へ。
解説しよう。
茸は、別名自然界の掃除屋と呼ばれているらしい。
そして。
ナガエノスギダケという茸。
別名を、なんとモグラノ雪隠茸というらしい。
その謂れと言えば、この茸の生えている地下には、必ずモグラの
トイレがあるからだそうである。
※ 図版は、写真:奈良教育大学 自然教育センターニュース
せせらぎ 52号より
この茸が、モグラの排泄物の中の尿素やアンモニアを分解して
土に還すという働きをしてくれるのだとか。
モグラは、巣穴がきれいになり。
茸は、栄養素を吸収し。
ということで。
この茸とモグラの共生関係は、今日もどこかの森の中で密やかに、
でもしっかりと繋がっているのだろう。
生ゴミのコンポストから始まって。
微生物。
キノコ。
そして、モグラへとバトンタッチが続いたことで。
様々なものが、様々な形で繋がりをもっているという、言葉にすれば
当たり前なんだけど、なんだかしみじみと感じいることの出来る思いを
胸にすることができた。
今日は、いい夢が見れそうだ。
(この稿、了)
(付記)
この。
モグラと茸の関係について、専門に研究しているのが、本コラムでも
取り上げられている相良直彦・京都大学名誉教授。
全く。
学問の種と言うものは、尽きることが無いなあと思う。
世の中。
関心を持つ心と。
感心する心。
両者があれば。
終生、退屈と言う語彙とは無縁で居られることだろう。
そう、しみじみと思う。
茸に魅かれて。
茸を追い続けて、京都大学の名誉教授にまでなる。
いい話ではないか。
(まあ、茸の研究でなられたのかどうかまでは不明だが)
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へぇ・・・びっくり、知らなかった。
生物の多様性というか、おもしろいなぁ
そう思うと、とても不思議です。