読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

大過剰

2017年09月11日 20時16分59秒 | ■読む
中島厚志著、日本経済出版社刊
経済活動の拡大は、たとえば耕地の拡大による食糧増産、物資の流通範囲の拡大による消費拡大、貨幣の材料である貴金属の発見、技術革新による生産効率の向上などによりもたらされてきました。そうした変化の要因が人びとの生活や消費活動を変え、経済の拡大を導いてきたのでした。近年ではグローバリズムの進展で、人件費の差に着目した生産拠点の移転や、技術革新による流通革命などで、更に加速されてきました。この近年の経済の動きは端的に言えば、賃金の格差を利用した合理的な経営判断に立脚したもので、中国のように経済成長が進むと賃金が上昇し、他の低賃金諸国へ生産拠点を動かしています。熱力学のエントロピーの法則に即して言えば、賃金の平準化に向かって進んでおり、その代わりとなる富の源泉となる要素は流動的です。
さて、本書は、先進諸国の不調の原因が人、物、金の過剰にあることを示し、その上で、成長を遂げるための方向を説いています。豊富なデータに裏付けられた分析と解説は非常に説得力があります。しかし、その論点は供給側の視点で、大過剰なのが消費財であるとはしていません。現実の生活では、取り敢えず生活するに困らない程度の品々に囲まれており、欲しいものはありながら必須のものは無い。そんな時代としての大過剰ではありません。その点でがっかりしましたが、今日の世界の情勢をはっきりと描き出していて参考になりました。
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URL => https://ja.wikipedia.org/wiki/中島厚志
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評価は4です。

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