北村滋著、文藝春秋刊外事警察は多くの警察小説で悪者として登場しますが、本書によれば、その特異な所掌事務故に、警察内部においても特殊な位置を占めているようです。一方で、国家公務員キャリア同志の競争や対立など、組織の性格以外の融和を阻害する要因も多いと思います。
そんな環境下で、著者は才能を生かし、能力を高め、やがて安倍政権の中枢で活躍されました。誠に見事な経歴ですが、本書から感じ取られる人格の高潔 . . . 本文を読む
藤田元信著、クロスメディア・パブリッシング刊過去の歴史において、それまでの戦い方を一変させ勝敗を決した新しい兵器や戦い方の例が沢山あります。飛行機、レーダー、原子爆弾、あるいはUボート対策として編み出されたオペレーションズ・リサーチの活用などがあります。本書は、そのような観点から、経緯がはっきりしている19世紀以降について、革新的な兵器や組織、運用、開発、戦い方まで、幅広く取り上げて分析しています . . . 本文を読む
ピエロ・マルティン著、朝日新聞出版刊現代社会のあらゆる面で基礎となっている単位の国際基準である「国際単位系」は、下記リンクに示されている様に「基本単位」と「組立単位」に分類されています。本書は、「基本単位」の意味と単位の成立過程や成立に貢献したり発見したりした人物を紹介しつつ、分かり易く、内容を解説しています。理科系の人であれば、常識の範囲の事柄が多いものの、登場する人物やエピーソードは、中々興味 . . . 本文を読む
2022年製作の韓国の映画です。全国でトップテンに入る者だけが入れる高校で落ちこぼれている男子が主人公です。母子家庭で豊かではないものの特待生として入学しましたが、担任の数学の先生からは、普通校への転校を進められています。ある晩、学生寮の友人達に頼まれ、酒と食べ物を買いに出掛けますが、帰ってきた時に警備員に見つかってしまい・・・
ありそうな話ですが、中盤からは思い掛けない展開が続き、暖かい感動に . . . 本文を読む
R.P.ファインマン著、大貫昌子約、岩波書店シリーズものらしい「困ります、ファインマンさん」を読んで、とても面白かったので、本書を手に取りました。本書は、下記リンク中の「エッセイ・伝記」中の一作目に当たります。上下二巻で、ファインマンの好奇心旺盛で偏見や先入観の無い、純粋無垢な好奇心に突き動かされて、興味を持った対象に向かっていったエピソードの数々が語らえています。
今風に言えば「一切忖度無し! . . . 本文を読む
山舩晃太郎著、新潮社刊熱血球児が夢破れて野球への夢を諦め、次に見つけた目標が・・・・・ほとんど英語力が無いまま、アメリカの大学院への入学を志して、単身渡米し・・・・・
驚異的な情熱と努力で、入学の門をこじ開けた著者は、その後も猛烈な努力を積み重ね、やがて、海洋考古学上、画期的な論文を完成させて、更なる高みを目指します。
信じ難い挑戦の連続にハラハラドキドキ。明るく分かり易い文章に、グイグイ引き . . . 本文を読む
佐木隆三著、文春文庫刊日本が富国強兵の為に必須と判断して建設した八幡製鉄所で働き、後に宿老と呼ばれる職人の最高位に就き、98歳で死ぬまで鉄作りに携わっていた田中熊吉の生涯を軸に、周囲の人々や出来事を辿った物語です。
著者の佐木隆三はさんは、「復讐するは我にあり」で直木賞を受賞して著名ですが、作家になるまでは、八幡製鉄所で働き、最後は社内報を作る部署に配属され、田中熊吉さんに何度かインタビューを行 . . . 本文を読む
岩崎育夫著、中公新書刊シンガポールの知識は、以前は日本人の人気観光地であったことと、国民一人当たりのGDPが日本を上回っていること、そして、水を対岸のマレーシアから輸入していることくらいでした。目立った資源がない極小の国が、何故、先進国の一員になれたのかという疑問が頭の片隅にあったので、本書を手に取りました。文体が平易で無駄がなく、シンガポールの基礎となったイギリスの植民地時代から説き起こし、大ま . . . 本文を読む
杉本貴司著、日本経済新聞出版今まで、アメリカのネット関係の成功者をテーマにした書籍を色々読みました。アマゾンでの評価を参考にして選んだお陰か、ほとんどが良い読後感でした。
日本人の成功者の著作は、アメリカ人が書くものとはかなり違った表現で、事実だけでなく人柄や信念などの人間性を色濃く反映している様に感じます。「プロジェクトX」の様な人間ドラマ仕立ての傾向を感じます。しかし、どちらの書きぶりも内容 . . . 本文を読む
林良祐著、朝日新書刊TOTOのウォシュレット開発に携わった著者が、日本のウォシュレットの登場以降、TOTOが開発した様々なウォシュレットを紹介し、開発時の目標と苦闘を簡単に振り返り、執筆当時の2011年時点での将来展望を描いています。期待に反して技術的な分野の掘り下げが少なかったので、ちょっと残念感が残りました。
ウォシュレットの開発・販売競争が激しかったので、世界に類を見ない日本独自のウォシュ . . . 本文を読む
仁瓶勉著、講談社刊日本のSF漫画です。全9巻の単行本で読みました。遠い未来の人工天体アポシムズで起きる物語です。
この類いの漫画はほとんど読んだことがないせいか、勝手が分からず読み進めましたが、却って予断を持たず読み進めました。「風の谷のナウシカ」を思わせる地底世界の描き方や描画のタッチが独特です。登場する様々なメカや人物達も独創的です。
人物の描き分けが不十分なのか、この手の作品読むのに必要 . . . 本文を読む
月村了衛著、実業之日本社刊2021年出版の著作です。月村さんの作品はバラエティに富んでいて内容のトーンも様々です。本作は、中国のハニートラップに引っかかったノンキャリアの農水省中堅職員の物語です。この主人公が、「ザ・公務員」の典型的な人物で何の野心もない穏やかで平凡な人物。また、中国政府機関に命じられたハニートラップの女性は、見かけが平凡で心優しい留学生。
この二人が、中国の諜報機関と日本の公安 . . . 本文を読む
月村了衛著、小学館刊日本と中国の合意に基づいて、警視庁に新しい係が作られた。中国の意に沿った組織であろうと言うことから、周囲から「香港警察東京分室」と揶揄されている。日本警察と香港警察から同数が選抜された2チームから編成されるが、どちらも相手方の言語への十分な能力が求められる。メンバーの経歴は多様だが、実は優秀な人材が集められている様で個性も様々。
最初の任務は、香港の大学教授であった女性で、か . . . 本文を読む
宇野重規著、講談社選書メチエ刊大分前に、フランスの貴族出身の法律家が、アメリカを訪問し様々な見聞を得て、「アメリカのデモクラシー」という著作でアメリカの民主主義を分析し論じていることを知りました。永らく頭の片隅に引っかかっていたので、本書を手に取りました。
著者はトクヴィルの研究家で、本書は、トクヴィルの生い立ちと思想遍歴を簡単に振り返り、その代表作である「アメリカのデモクラシー」の主要な論点を . . . 本文を読む
渡辺みどり著、中公文庫刊満州国を作った関東軍が主導して満洲国皇帝、愛新覚羅溥儀の弟、愛新覚羅溥傑との政略結婚が行われた。慎重な検討を経て、溥傑本人の意向を確認して選ばれた女性が、本書の主人公、愛新覚羅浩(嵯峨浩)であった。
幸いなことに、結婚した二人は相性が良く愛情を育み子をなした。しかし、日本国の敗戦により満州国が崩壊し、皇弟の溥傑と浩は離ればなれになり、特に浩は次女と共に地獄の様な逃避行と恐 . . . 本文を読む