人生の謎学

―― あるいは、瞑想と世界

アートマンとブラフマン

2018-04-19 04:02:56 | 神秘思想
 サンスクリット語で「自我」をあらわすアートマンは、インド哲学の術語で、「我」と漢訳されている。本来は呼吸を意味していたのが、やがて生気、生命原理、霊魂、自己、自我などの意に用いられ、万物に内在する霊妙な力、宇宙の根本原理の意味にまで深化した。  またブラフマンは、宇宙の根本原因を表す術語で、これは「梵」と音写される。ジュニャーナ・ヨーガがその根拠としたベーダーンタ学派の教義は、インド哲学の主流だ . . . 本文を読む

稀なる人々 ―― ベナンダンティ

2009-08-14 16:23:03 | 神秘思想
■カルロ・ギンズブルグの処女作『ベナンダンティ』は、一六世紀と一七世紀におけるイタリアのフリウーリ地方で行われた奇妙な儀式についての論考である。農民のあいだで行われたその儀式の実行者は、ベナンダンティと呼ばれていた。 彼らはおのずと秘密結社のような組織を形成し、年に四回、四季の斎日の木曜日の夜に外出して、魔女や魔術師と戦うのである。彼らの夜の外出は、昏睡状態に陥った後、魂が離脱した状態、つまり体外 . . . 本文を読む

死の予告を受けること

2008-12-10 18:08:43 | 神秘思想
■このテキストのタイトルに、結局「予告」という言葉を使用することにしました。「死の知らせを受けること」としたほうが、穏当でいいのですが、「死の知らせ」には別の意味がつよく付帯することが気になったのです。 このテキストについて、私はいろいろといいたいことがあり、しかしこの時期、本業のほうが大変多忙になってきており、今回は部分的なアップにとどめます。 〈死の予告を受けること〉_1 〈死の予告を . . . 本文を読む

ジャイナ教の宇宙観

2008-11-11 01:27:34 | 神秘思想
■ジャイナ教の宇宙観についてまとめてみました。 輪廻している霊魂について、ジャイナ教は「不動のもの――スターバラ」と「可動のもの――トラサ」とを大別し、不動のものは地・水・火・大気・植物などのように感官を一つしか持たず、可動のものは動物・人など感官を二つ以上備えたものと規定します。また物質については、場所を占有する実在体であるとして、色・味・香り・可触性・音性を属性とし、霊魂と同じく無数に存在する . . . 本文を読む

恵方について

2008-09-01 00:16:04 | 神秘思想
■人間関係などをめぐる吉凶と禍福が、方位によって決定されるという信仰は、中国古代から存在しています。戦国時代には陰陽五行説に《易》の哲学を合わせて、さまざまな分野で五行や十干十二支あるいは八卦を配当して、全体的な世界観が成立していきます。たとえば《黄帝宅経》は唐代に成立したものと考えられ、ここでは方位を二十四の分野に分け、乾・震・坎・艮・辰を陽位――刑禍として、また坤・巽・離・兌・戌を陰位――福徳 . . . 本文を読む

気功について

2008-08-27 00:06:43 | 神秘思想
■気功についてまとめてみました。 内丹功の瞑想の目標は「金華」――黄金の華を自分の体内に生み出すことであるとされます。金華は「黄芽」あるいは「黍珠」(神秘な真珠)などとも呼ばれますが、これは瞑想が深くなったときに現れる光の幻覚体験を指しています。これは水―坎で象徴される女性原理と火―離で象徴される男性原理とがひとつになる「坎離交媾」によって、不死の人格を生み出す「真人受胎」の状態でもあります。受 . . . 本文を読む

臨死体験について

2008-08-26 00:05:10 | 神秘思想
■臨死体験について、きわめて合理的な解釈のひとつとして、以下のテキストをまとめました。 〈臨死体験について〉_1 〈臨死体験について〉_2 〈臨死体験について〉_3 〈臨死体験について〉_4 〈臨死体験について〉_5 . . . 本文を読む

ジョルダーノ・ブルーノ

2008-08-21 20:28:38 | 神秘思想
■ルネサンス期のイタリア人哲学者ジョルダーノ・ブルーノ(1548~1600)は、ドミニコ会に入会し、トマス・アクィナスの思想を学ぶかたわら、ルルスの記憶術、テレジオの自然主義などから強い影響を受けました。しかしやがて異端の疑いで裁判にかけられることになると、修道院を逃亡して、イタリア各地のみならず、スイス、フランス、イギリス、ドイツなどを遍歴し、ロンドン滞在中に『無限、宇宙と諸世界について』を著し . . . 本文を読む

ヒルデガルトの幻視

2008-06-25 17:49:10 | 神秘思想
■ベネディクト会に入って修道女となったヒルデガルト・フォン・ビンゲンは、49歳のときルーペルト山に女子修道院を建てました。生涯に数多の神秘体験を得、その内容を著述のかたちで残しましたが、また自然学、医学、生理学などの方面にも造詣が深く、その知識にもとづいて多くの病者を癒しました。さらには神秘劇を創作し、細密画や人体宇宙図にまで手をひろげています。 〈ヒルデガルトの幻視〉_1 〈ヒルデガルト . . . 本文を読む

平田篤胤の怪異聞き書き集

2008-06-14 00:02:43 | 神秘思想
■国学者の平田篤胤は、自らの編著『仙境異聞』について「此は吾が同門に、石井篤任と云者あり。初名を高山寅吉と云へるが、七歳の時より幽界に伴はれて、十四歳まで七箇年の間信濃国なる浅間山に鎮まり座る神仙に仕はれたるが、この間に親しく見聞せる事どもを、師の自ずから聞き糺して筆記せられたる物」と説明しました。この著はやがて平田家門外不出の極秘本となります。 寅吉は七歳のときに丸薬売りの老人が壺の中に体ごと入 . . . 本文を読む

映画 《スティグマータ/聖痕》

2008-06-12 00:41:58 | 神秘思想
■映画 《スティグマータ》について、最低限のことをまとめてみました。 映像作品として、高度につきつめた内容が描かれていると思います。 マイケル・ジャクソンなどのミュージック・ビデオを手掛けたルパート・ウェインライトの監督作品です。製作はフランク・マンキュソーJr( 《13日の金曜日》、 《スピーシーズ》シリーズ、《RONIN》など)。脚本はテレビドラマ出身のトム・ラザラスとリック・メイジ。撮影は . . . 本文を読む

ヘルメス思想

2008-04-11 00:01:58 | 神秘思想
■ヘルメス思想についてまとめました。 ヘルメス思想は秘教としてヨーロッパおよびイスラム圏に受け継がれ、おもに占星術、錬金術の哲学として研究されてきました。ルネサンス期のイタリアで『コルプス・ヘルメティクム』(ヘルメス選集)が刊行され、コペルニクスやケプラーなどの近代科学の創始者たちに信奉されましたた。さらに十七世紀以後、薔薇十字団などの秘密結社に受け継がれ、十九世紀以降には文学や芸術に強い影響をお . . . 本文を読む

奇跡の奇跡

2008-04-09 11:19:00 | 神秘思想
■私は「奇跡の奇跡」という概念を大切にしています。「私がこれまでに経験してきた、合理的な説明が困難な出来事は、一つや二つではない。科学的にどう解釈しようが、それらの体験のうちには、どう考えても不合理な要素が残存するのである。それだから私は、奇跡や奇跡的な出来事というのは、やはり存在するのではないかと考えるしかないのである。――このとき、度重なる私の不可解な経験が『奇跡の奇跡』なのである。」 「私 . . . 本文を読む

五行配当

2008-03-15 00:37:59 | 神秘思想
■世界に生起する現象の意味と吉凶を、五行によって配当することは、数式によって解明できるほど明確なものではありませんが、陰陽五行説の具体的な活用の第一歩です。それは実際にどのような観点から体系化されていったか、以下に要点だけまとめてみました。 〈五行配当〉_1 〈五行配当〉_2 . . . 本文を読む

陰陽五行説

2008-03-13 02:17:10 | 神秘思想
陰陽説はその象徴的二元論の性質からして、タレスの〈アルケー〉、ヘラクレイトスの〈エナンテオドロミア〉、アナクシマンドロスの〈アペイロン〉などの概念に比して、より適応範囲の有効性に優れ、――と思うのだが――さまざまな分野での応用が利くと同時に、ある分野での独特の深化をも促すことのできる概念である。陰陽二気の消長に通じる者は陰陽家と呼ばれ、『史記』では、陰陽家を儒家、墨家などの諸家の首にあげ、班固の『 . . . 本文を読む