子供の頃に、最初に猫といういきものに出会った思い出を、わたしはこれまでなんとなくこころの小箱に入れ、鍵をかけていた。それは正面から考える姿勢に対して、ある疾しさを感じているからにちがいなかった。しかし今夜はその鍵を開けてみる気になった。
――そのとき、わたしはおそらく七歳か八歳で、八帖の洋間で就寝していた。その部屋はわたしにあてがわれた部屋ではなく、ふだんはリビングのように使っていて、寝るとき . . . 本文を読む
私が現実の構造に不満があるのは、意識や行為がもたらす結果の遅さと、概ねその結果のなかに潜む凡庸さのゆえである。世界についての直観というものが、純粋な経験のうえに決して反映されないとするなら、経験が対象とする所与の性質について、何か構造的な作為性を感知するのは、それほどふしぎなことではない。このとき直観は、それがもたらす結果に対して、経験の純粋性を奪取しようとする。すると直観は、時間と空間について . . . 本文を読む
■――予知の成立には、また確率の問題も含まれているに違いない。百のことを予知して、結果的にひとつのことが予知的に成立したとき、そのひとつ以外はすべて忘れ去られる、ということが考えられる。さらには、あるひとつのことを、あるゆらぎを認めたまま予知したとすると、現実の到来にしたがって具体化するその程度に応じて、ゆらぎにおけるさまざまな可能性をしだいに限定してゆき、やがて「決定的」な予知内容を外在的に確認 . . . 本文を読む
■――爲學日益。爲道日損。損之又損。以至於無爲。無爲而無不爲。取天下。常以無事。及其事。不足以取天下。
……老子道徳経の第四十八章について、あれこれと考えてみました。
関連資料は、一見この話題とはかけはなれているような違和感がありますが、人生の底流でつながっていると考えます。
〈老子道徳経 第四十八章〉
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■エナンテオドロミア(エナンティオドロミア)は、古代ギリシアの哲学者ヘラクレイトスに由来する概念です。
自然哲学の用語で、一方に偏ったものが他方の極に向かって変化することを指し、ユング心理学では、一面的になった意識を無意識がバランスを保つべく作用することを意味します。
アナクシマンドロスは、無限定であるところのアルケーは、神的で不滅なアペイロンから、暖かいものと冷たいもの、乾いたものと湿ったもの . . . 本文を読む
■首は頭とほぼ同義ですが、脳を含むかどうかによって、微妙に意味合いがちがってきます。「首狩り」という習俗行為において、人間の頭に宿る霊力を無視して考えることができないように、頭蓋崇拝の根底には、頭蓋に霊力を認める考え方が歴然と存在します。
頭は脳を含み、文化史的にも宇宙との関係で位置づけられてきましたが、とくに心や知性、宇宙や太陽や権力などを表徴することになります。
また頭は身体の他の部位から独 . . . 本文を読む
■「自分」とは何かをめぐって、自己と自我についてまとめてみました。そしてそのうえで、次に自己意識というものの多様なありようをまとめてみました。――どこかに打開の糸口があることを信じて。
〈さまざまな自己〉_1
〈さまざまな自己〉_2
〈さまざまな自己〉_3
〈さまざまな自己〉_4
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パスカルの『パンセ』のなかのもっとも長い断章のひとつに、「二つの無限」について語った有名な部分がある。そこには強靭な宇宙意識が宿っている。
〈パスカル ―― 無限と無〉_1
〈パスカル ―― 無限と無〉_2
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■世界観についてまとめてみました。
この話題には別の角度からの検討も可能でしょうが、ここでは神秘主義的世界観、有機体論的世界観、機械論的世界観の三つをとりあげました。
本稿の最後にもふれてありますが、私がこのように世界観についてまとめておく必要を感じたのは、最近の唯物論と目的論的世界観との対立をめぐって、近々まとまったテキストを書く準備をしているからです。
〈世界観について〉_1
〈世界観 . . . 本文を読む
■神話の多面的な要素を、その種類と構造とに着目してまとめてみました。
ジョーゼフ・キャンベルは『千の顔をもつ英雄』のなかでこう述べています。
《夢は個性化された神話であり、他方、神話は脱個性化された夢なのである。神話と夢は、ともに同一の普遍的なはたらきにおいてプシュケのダイナミックスを象徴的に表現する。》
〈神話の世界〉_1
〈神話の世界〉_2
〈神話の世界〉_3
〈神話の世界〉_4
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■重層的な意識の構造を、以下のようなテキストによって探査してみました。私にとってこれはきわめてリアルな問題に思えます。
本文にあるような思考実験でその輪郭をととのえるかにみえる、ある存在形式における極限的恐怖の感覚は、たとえばマトリックスに入って他者の感覚中枢にアクセスする装置が高度に発達するような未来社会において、若干は緩和されるでしょうが、本質的な解決とはいいがたいと思います。むしろ宇宙論に . . . 本文を読む
■以下のようなエピソードを、どこで耳にしたのか、ずいぶん以前のことで、もうすっかり忘れてしまいましたが、内容だけはいまも鮮明に残っています。
――こんなふうに「忘れる」ことで、もしかすると多くのことが、思ってもみなかったようなブレイクスルーに至る場合があると考えます。
・忘れること
二人の僧が歩いてゐると、水溜りがあつて、美しい身なりをした女性が、その先へ行くことができずに困つてゐた。
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■私は以下のようなことをブログに書くことが、他人の目にいかにコッケイにうつるか、よく自覚しています。言葉でなにかを構築してゆくというとき、かならずこういう客観意識の掣肘がはたらきます。しかしやはり、そういうことはのりこえてゆきたいと思います。
■人はなぜ苦しむのか。――いったい、この苦しみに、どんな根源的必然性があるというのか。
私たちは、苦しみや悲しみの概念的象徴性にまどわされ、その印象に押し . . . 本文を読む
■爬虫綱有鱗目のイグアナは、全身が細かい鱗に覆われ、背中の線上に長い棘状の飾り鱗が並んでいます。ガラパゴスのリクイグアナは、ウミイグアナと共通の祖先から進化したと考えられ、溶岩台地にわずかに芽吹く木の葉などを餌としていますが、サボテンも彼らの好物です。ウチワサボテンは、もともと地上を這うようにして育っていましたが、花や果実をリクイグアナから守るために、次第に幹を高くのばし、大きなものでは10メート . . . 本文を読む