1819年、ゴヤは生涯で三度目となる瀕死の重病に陥った。その翌年、一枚の絵を描いた。
――医者に抱きかかえられ、煎じ薬を与えられる息もたえだえの病人、ゴヤの姿には、生死の境にある人の急迫したリアルな印象がある。衰えた皮膚は白くむくみ、鼻と頬の間に深い皺が刻まれ、口元には力がなく、眼は朦朧と宙をさまよっている。手が弱々しくベッドのシーツをつかんでいるところが、そこだけ辛うじて生への執着の弱々しい . . . 本文を読む
なにかを成し遂げた人の死からは、いろいろなことを感じ取ることができ、またいまだこの世にある者にとって、その位相を超越した先達から学ぶものは多いと思われます。たとえばピカソ。
ピカソの死
■ピカソの生涯
■マリー=テレーズ ―― ピカソの影で
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ベンヴェヌート・チェリーニ(チェッリーニ)は、西洋美術史に名をとどめる業績とともに、さまざまな問題行動を起こしたことが知られています。彼は自尊心が強く、血気盛んな性格のため、傷害事件を起こし、強盗をはたらき、男色行為にもおよんでいる。――芸術家が問題行動を起こすことは、決してめずらしくはないだが、チェリーニの場合は、殺人まで犯しているのである。このような凶悪犯罪は、芸術家にあってもきわめて稀であり . . . 本文を読む
■画家としては早熟だったダリは、少年期から卓越した写実的描写力と、異様な幻覚的資質を備えていました。12歳で印象派風の点描で描き、1920年には未来派、23年から25年まではデ・キリコの形而上絵画に感化されますが、28年にパリに出てシュルレアリスムの運動に参加、翌29年に最初の個展を開き、フロイトの影響下で夢や幻覚による内面の無意識世界への探求を試みます。《記憶の固執》(1931)にみられる柔らか . . . 本文を読む
子どもの頃、木漏れ日の中に天使の姿を見て以来、異常な幻視力を開示したウィリアム・ブレイクは、ある有名な版画家と会った後で、その版画家の死を予言した。
彼は自分の描く幻想的な世界が――神や天使、あるいは悪魔までをも現実的に――実際に見えると公言してはばからなかった。
このため彼は周囲から「マッド・ブレイク」と呼ばれ、やがて弟が死ぬと、製作上の方法を「弟の霊」に教えられるなどして霊感を得て、二年 . . . 本文を読む