人生の謎学

―― あるいは、瞑想と世界

百物語/連鎖

2015-09-25 01:03:39 | 百物語
……………………その日――工事に入って二週間ほど経ったころ――一日の仕事が終わり、旅館で風呂と食事を済ませた後、わたしたちは誘い合って、皆で近くのスナックで飲んだ。はじめのうちは愉快な会話が飛び交っていたものの、やがて大工のFさんが、わたしの先輩のひとりJという男と、激しい口喧嘩をした。原因はつまらないことだったように思う。このJという男は、ひねくれ者の皮肉屋で、日頃からあまり好かれてはいなかった . . . 本文を読む

百物語/必然の空転

2013-08-26 08:08:09 | 百物語
 偶然は、ある意味を帯びて必然になる。しかし必然であることが稀有であるにもかかわらず、その意味が見出せない場合がある。しかしもしかすると、その出来事の底流には、想像もつかない恐ろしいものが流れているのかもしれない。  ほんとうに恐ろしい体験は、もしかするとそこに何の教訓も含んでいないかもしれない。ただ体験として経験しただけで、記憶にはとどまるが、どのような意義も反省も生まないまま、やがてはしずかに . . . 本文を読む

死んだふりはよくない

2011-04-17 00:30:31 | 百物語
 アナトール・ル・ブラーズ編の『ブルターニュ幻想民話集』という本がある。ブルターニュ地方の民話や伝説などが集められているが、そのほとんどが死者や幽霊にまつわる物語である。  原著で132話の物語が、邦訳では97話の抜粋となっているが、この中に、ほんのいたずら心から死の真似事をして、同級生を、あるいは許婚者の青年を驚かそうとした結果、悲惨な結末をむかえる物語が二話収録されている。  その結末とはどの . . . 本文を読む

百物語/食後しばらくして……

2010-03-24 02:08:19 | 百物語
その夜のことを思い出すと、私はいまだに奇妙な気分になる。その種の体験を頻繁にする人なら、合理的な解釈がしやすいのだが、気質的にも体質的にも、私はそういうタイプではない。 ――その日はふつうに仕事から帰ってきたのが夕方近くで、私はすぐに風呂に入った。一日の仕事としては楽なほうで、身体に疲れを覚えることもなく、風呂から出ると自室で雑用をした。やがて七時になり、私たちは夕食をとった。――私たち夫婦の生活 . . . 本文を読む

ゴキブリのシャワー

2009-08-13 02:45:51 | 百物語
■ここに私がまとめた実体験は、いささか異常な内容であるものの、それが実は連鎖的な意味を包含していることに気づいたのは、ずっと後になってからである。したがってこれらの出来事は、それと前後して生起したいくつかの出来事と響きあっていることを認識しながら、数年の歳月をかけて、やがて私に死の覚悟をさせるに至った「奇病」のことを含め、その経緯の流れの中で解釈しなければならないものと考えている。 ゴキブリのシ . . . 本文を読む

連鎖

2008-06-17 00:03:56 | 百物語
このページに掲載していた記事は、加筆改定のうえ、 《百物語/連鎖》と改題して、新規に以下のページに投稿しました。 ■百物語/連鎖 . . . 本文を読む

手の幽霊

2008-06-16 00:17:46 | 百物語
 二十歳の頃、わたしが家を出てはじめて借りた部屋は、実家から車で三十分ほどの距離にある古い木造アパートだった。  不動産屋の仲介を経て、物件の所有者に案内されて下見した。建物の前で鍵を預かって、所有者は一足先に帰った。  わたしは時間をかけてゆっくりと、気に入った部屋を探せばいいと思っていたのだが、そのとき下見した直後に契約を済ませてしまった。なぜそんなに性急に決めてしまったかというと、その部屋で . . . 本文を読む