オレンジ色の紫陽花

携帯から軽快に綴るおいらの日々。
…だったのだが、ツイッターのまとめブログに変更。極稀にこっち単独の記事もある、かも。

「夢の守り人」

2007年12月25日 17時32分17秒 | ほぼ、文庫本
夢の守り人/上橋菜穂子/新潮文庫

うわ。一気に読んでしもた。
たまたま今日は、市場まで行く用事があったんだけど、そこへ行く線(鉄道)てのが本数少なくてさ~。乗ってるのは一駅だけど、待ち合わせも入れると時間はいつもの通勤よりかかった。
おかげで、往復する間に読んじゃった。

「守り人」シリーズの文庫化3冊目。
相変わらず、バルサは雄々しく(短槍遣いの女用心棒)、タンダは優しく、トロガイ師はくわせ者で、チャグムは似合わない皇太子で、シュガは賢く若くしたたかな博士だ。
バルサを慕う、なんでも屋のトーヤとサヤが夫婦になってたのにはちらっと驚いたけど、まあそうなるのが自然だよな、という流れだったからね。

勢いだけでががが!と読んだから、詳しい感想は書けません。ほんとに、つくづくおいらは読書感想文が苦手なんだよな、むかしっから。
それでも、忘れないように書くなら、タンダの身に起こった一大事、それをめぐる周りの人達の奮闘ぶり、バルサのタンダへの想い。がおいらなりのキーワードかな。
あ~あ、やっちゃった、なタンダの優しさと無茶と、最後の最後にモノを言う意外な強さ。
たかだか13歳、さらには皇太子とは思えないチャグムの成長ぶり。と同時に13歳だからこそ、皇太子だからこその寂しさや切なさや辛さ。
食えないバアさん、てだけじゃない、トロガイ師の人であるが故の過去、それを封印せざるを得なかった師の生き様。
望んだわけではないのに、運命に翻弄されるままに過酷な道を生きてきたバルサの、唯一といってもいい、心を許せる相手タンダを想う心情。
「冗談じゃない。あいつを殺すくらいなら、あいつに、この首をくれてやるよ。」
この台詞のなんと重いことか。

ファンタジーをこれまであまり読まなかったのは、なんとなくウソ臭くてしょうがなかったから。ウソが嫌いなわけではないけど、そんなもったいつけんでもさ~、みたいなね。
でも、このシリーズを読み始めて、考えが変わった。
ファンタジーは、異世界を舞台にした大河小説である、と。そして、おいらはその手の話が嫌いではない、と。
勿論、ファンタジー全部がそうとは限らない。舞台をどこに移そうが、ウソ臭いものはウソ臭いだけだ。でも、少なくともこのシリーズは、間違いなく上々の大河小説だと思う。
人であるから、人であるために、人は様々に伸び、ぶつかり、傷付き、ひしゃげ、ねじ曲がり、雁字搦めになり、それでもなお、伸びることを止めない。他を巻き込み、己も巻き込まれ、それでもなお、静止することはない。
なんで自分はここに、或いはこうして、い(きてい)るんだろう?
その答えは、案外、本書のようなファンタジーに書かれているのかもしれない。

余談ながら、本書の解説は、かの養老孟司氏。これがまた、解説だけでいいから読んで!と言いたいほど絶品。てなこともあるので、これは買いだよ~!!
(おいらは新潮の書籍部か!)



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2 コメント

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私が思うに (そうむらさき)
2008-01-02 00:06:16
ある種の異世界ファンタジーというのは、結末が分からない歴史小説だろうなと。
例えば、土方さんがいつどこで死ぬかなんて、ほとんどの人がおおむね知ってます。どういう形で死ぬかは作者の書き方次第ですが、それでも「いつ、どこで」というラインは普通なら外さないで書きます。
つまり、多くの場合は、読者は結末が分かっている状態で読むわけですね。もしくは結末を容易に知りうる状態で。
これに対し、すぎむらさまが「大河小説」と呼ばれた類の異世界ファンタジーは、まず結末が読者には分かりません。当然ながらそこへ至る過程も。
それらは作者だけの秘密で、多分そこがこの手の作品が面白い理由の一つだろうと思います。
私も、同人誌でそういうの書いてたから分かるんですが(苦笑
なるほど! (すぎねえ)
2008-01-03 14:05:20
いやはや。いつもながらに造詣の深いコメントをありがとうございます、そう様~。
なるほどな、「結末の分からない歴史小説」な。それは言いえて妙だ。
確かにね、新撰組の話にしても戦国時代の話にしても(歴史小説はそのジャンルしか読みませんもんで…わはは)、結末は分かってる、そこへ向かうプロセスをどうとらえるか、を読んでるもんな。視点による違いとかね。
なんにしても、ファンタジー、…に限らず、しっかりがつり書き込めば書き込むほど、話というものは長大になるのは必至。それをいかに読者に読ませるか、が作家の腕だったりするのかな。
ストーリーで読ませるのか。描写で読ませるのか。会話で読ませるのか。
いやいや。奥が深いよ。なんでもそうだけど。