オレンジ色の紫陽花

携帯から軽快に綴るおいらの日々。
…だったのだが、ツイッターのまとめブログに変更。極稀にこっち単独の記事もある、かも。

「空の中」

2008年06月29日 14時38分29秒 | ほぼ、文庫本 2008
空の中/有川浩/角川文庫

うぅゎどうしよう面白いよ!

…というのが、半分よりちょっと手前まで読み進んだときの、魂の叫び(笑)。
初っ端、出だしが飛行機事故で、しかも、民間機のテスト飛行(だったはずだ)という、あまり一般的ではない場面での事故。
さらに続くのが、航空自衛隊による事故調査のための、いわゆる現場視察のための飛行。
…正直、「スカイ・クロラ」を彷彿とさせて、え、また空の話だよ、しかもナニゲに詳しいよこの本、そういう本なのかな、とちょっと食傷気味…。
そういえばこの作者の「図書館戦争」シリーズだって、自衛隊ちっくな図書館防衛隊が、そりゃもう鮮明に詳細に書かれていたもんなあ。…なに、この作者ってミリタリーオタクとかいうやつか?(こらこら。せめて膨大な資料を読みこなしてリアルに書いてる、とか思おうよ。)

この出だしの違和感ていうか、設定に抵抗がなければよし、もし読みにくかったとしても、ここさえ乗り切れば後はざくざく読める。
時に月9のようなベタなラブコメ、時に学園青春モノのようなベタな若者(ていうか子どもか)像。肩の力の抜きどころは満載。
出てくる人物のキャラクターが一々立っていて、どれかに自分を投影させるもよし、人物それぞれを平等に追っ掛けるもよし。アニメ化かドラマ化(映画化)を想定して、声優や俳優をキャスティングするとさらに楽しめること請け合います。

…と、まあこのくらいにしておいて。

この話の、何がどうって、
おいらには痛かった。
よく言われる「イタイ」話という意味ではなくて(いや実際「イタイ」人たちが出てくるし、そういう人たちの話ではあるんだけど)、
身につまされるというか、身に覚えがあるというか、こっそり一人で隠し持っているものをずばりと指摘されて、痛い。…これは、私だ。

大人と子ども、という対比がいろいろな形で、出てくる。
そして多分、そのどれにおいても「子ども」は、「大人」になっていくのだ、という、大まかに言ってそういう話だと思う。
たとえば、瞬とフェイク。真帆の母親と真帆。対策本部と「セーブ・ザ・セーフ」。リアルに大人と子ども。そして多分、白鯨とフェイク。
とどめに、大人の中の大人、揺ぎ無い絶対の大人の存在として、宮じい。
って書いても、何のことかさっぱりだよね、読んでない人には。
でもこれを一々、これが誰でそれはこうで、と説明するほどお人好しじゃないからさおいらは。(え、開き直り?)
説明したら、ものっそ味気ないことになりそうだし、その意味でも止めておきます。それは賢明な判断だと自画自賛。

P327の終わり5行目からの、佳江と宮じいのやりとりが、もう、ぐっとくる。
そこで言う、宮じいの
「間違ったことを正しかったことにしようとしたらいかんわえ。神様じゃないがやき、あったことをなかったことにはできん。」
これがもう、すぱぁん、と、来た。
うわやられた。
この宮じいが素敵すぎる!
さらにこの高知弁!!
ああ、坂本龍馬もこんな風に喋ってたんだろうなあ、などと思ってしまったことはご愛嬌、てことで一つ。
解説で新井素子女史が書いておられるとおり、この話の何がキモって、そりゃもう、宮じいと高知弁だと思う。この二つなくして、本書の面白さとか深さとか、そういうのは有り得ないから!

で、おいらもこの新井女史に倣って言う。

まあ、読め。
いいから、読め。
とりあえず、いっとけ。
面白いから。

「楽隊のうさぎ」

2008年06月27日 11時39分32秒 | ほぼ、文庫本 2008
楽隊のうさぎ/中沢けい/新潮文庫

これほど世に「吹奏楽小説」があるとは思わなかった。
なんだか熱いよ、吹奏楽。…っていうかこれはおいらが、今更、なのか?
そのうちの一冊、おいらにとって記念すべき初体験が本書。

…あのー、さー、
(最近、こういうトーンが多いな)
これはー、どうなの、これでいいの?
正直、作者が何を、いや、どっちを書きたいのか、よく分からなかった。

確かに、中学生(出てくるのは花ノ木中学という、ニュータウンにある公立中学なので)ってのは
それほどクラブ一辺倒でもないし、まして今の子はね、おいらの頃よりも
もっとクラブを重視してないよね、体育会系ならまだしも。
ま、その中にあって、ブラスバンドってのは昔から「体育会系文化部」て言われて
そんじょそこらの体育会系クラブに負けないくらい熱いんだよな。
夏のコンクールてのがメインでな。
あーでもそれは、中学にもよりけり、だけど。
やはりコンクールの下位常連校(…ご、ごめん、他に言い方知らないんだよ)だと
それほどでもないかもな、おいらがかつて見た感じでは。
そう、おいらも中学三年間はブラバンに所属してましたからね、あの熱さと夏の暑さは経験済みなんである。
かといって、高校生ほど、クラブに特化してるわけでもない。
ちゃんと「普通の」中学生活もこなしてないといけない。
微妙なお年頃なので、クラスの中で浮いたりなんかしちゃったら、クラブの時間以外の学校生活が
窮屈なことこの上ない。ましてこのご時世だから、窮屈、で済まない、らしい。
…よかった、おいらはまだ、窮屈、で済ませられた時代で。

そういう中学生が主人公だから、クラブ三昧な日々というわけにもいかなくて、
両親の微妙な空気(でもこれは、ぜーんぜんそんなことなくて、なんだよフリだけかよ、なレベル)とか、
小学校からのいじめられっこ体質を引きずってたりとか、
その割にクラブに入ったことでそこから脱出してたりとか、
なんか、そんなようなクラブ以外の日常も、部分的に垣間見える。
この「垣間見える」ていうのがクセモノで、
ほんとに、ちょこっとさわりだけ紹介しておいて、え、この話のオチは?
解決するの、発展するの?ていうかこの子はダレ?(苦笑)
んもう、煮え切らないこと甚だしいったら!中途半端だなあもう。

そんでもって、これは経験者として言わせてほしいんだけどもさ!!
肝心のクラブ、ブラバンの話なんだけどもさ!!
なによ、この中学、公立なのに県大会上位はおろか、全国大会出場常連なの!?
うわそれ許せねえ!
…いや、まあ、十分ありうる話です、ここまで息巻く話じゃないです。
ですが!
それにしてはクラブの様子が淡白すぎやしませんか、て話でさー。
そんなね、あなたね、ズブの素人がね、昨日今日初めて楽器もちました、て子がね、
いくら人数が出場枠ぎりぎりだからってもね、
コンクールの舞台に上がってもいいんですか!!!
って思うわけさ!つか、無理!絶対!
そんなアータ、初めて3か月、よく見積もって4か月で、管楽器の音なんか、
出るわけあらへんがなー!(ぷんすか)
経験者は語る。
管楽器ってのはね、授業で吹く「リコーダー」とは違うのだよ。
金管のマウスピースの音が鳴るまで(あくまでマウスピース。楽器本体、とは言わない)、あるいは
木管のリードがちゃんと鳴るまで(これもあくまでリード。楽器本体、とは言わない)、または
フルートの息漏れが目立たなくなるまで(無くなるまで、とは言わない、いや言えない)、
どれほど吹かないと駄目だか、この作者、無視してますよね。間違いなくね。
どんなに天性の才能があったとしても、
管楽器を「響かせる」のは、3か月や4か月、放課後練習した、くらいでは、無 理 だ よ !!!(うわ言い切った…)(ゼーハーゼーハー)
その無理をごり押しするんだから、実は相当クラブにいれあげてないとおかしい。
寝ても覚めても、授業中も休憩時間も、弁当食っててもトイレにこもってても(何)、
心は常に楽器と共に!くらいの気概というか気迫というか気合いというか、がないとさ。
それはもう、そのせいでクラスで浮いちゃおうが、いじめられっこになろうが、クラブの部室以外にいくとこない状態になろうが、
何よりもクラブを優先して、もういっそ、放課後のクラブに出るために授業に出てます、的な
本末転倒ぶりが必要なくらいだと、おいらは思うの。
ちうかさ、実はそんなような状況だと読めるところもあるけども、それにしては書き方が淡白だと言いたいわけさー!むきー!(落ち着け)

だから!
本書のクライマックスであろう、いよいよ全国大会出場、となったときの高揚感
…あったっけ?(どかーん)
読み進んでたら「普門館」ていう名前があって、おいらはその名前にそれなりの思い入れがあったから、おお、と思ったけど、
一般の人はこれ、スルーするよ普通に。

てなわけで、この話のおそらくは最も盛り上がるべきところでおいらはしゅるしゅるー、と冷めてしまって
どうにもこうにも、尻窄み感が否めない。
否めないっていうかもう、とほほ、とか思っちゃったしな。
なんでいきなり、福岡の、一回きりしか会ってない少年が「ブラボー」とか言うのさ。
いや、実際あり得るかもしれないけど、それならそういう空気も書きようがあるだろう、
なんか、もう、

もう、いいや。(投げた)
なんか、これ、あまりに中途半端で、すっごい、
い や だ !
あくまでおいらが、てだけですよ、念のため。

「少年の輝く海」

2008年06月18日 23時43分28秒 | ほぼ、文庫本 2008
少年の輝く海/堂場瞬一/集英社文庫

この本も、タイトル買い、失敗の巻。

タイトル買いっていうか、これは間違いなくおいらの選択ミスだ。

ほんとは、この作者の刑事シリーズ(警察かもしれん)を読もうと思ったんですが
如何せん、シリーズですでに何冊も文庫になってて
これは一冊読むと全部読みたくなる…と、ちょっとコワイことを思ったので
どんなもんなんだか、とりあえず軽いところで読んどこう、
という浅はかな考えの下に、うっすい一冊(本書)を購入。
…結果、後悔の嵐でした。

タイトルどおりの本でした。

…終わり。(なんだってーーー)

てなわけにはいかないよね、やはりね。
でもおいらにとっちゃ、そういう一冊になりました。あーごめんなさい、この本。

唯一の救いは、夏前に読めたことかな。
おいら近年は特に、日光に対して非常ーーーに耐性が弱くなってきて、
ちょっと日に当たると途端に、かーゆいかゆい!日焼けもそうだし汗がね!
汗がだめなのもう、テキメンに皮膚が荒れる、荒れるっていうかただれる、
あせもなのかアトピーなのかとにかくざわざわって感じにね。
ってもうそんなことはいいんだけども。
そんなわけで夏は苦手なんです。
が。
夏は好きなんですこれがまた厄介なことに!!!
海。空。雲。太陽。セミ。汗。陽炎。照り返し。裸足。甲子園。ひまわり。
…書いてるそばから汗が噴き出しそうなラインナップ…
大好きなんですこういうの。(でも前述のようなわけで、苦手でもあるんです)(せ、切なー…)

だから、というか、せめても、というか、
夏前には、そういう夏を賛美したものを見たり聞いたり読んだり、したい。
かつてのドラマ「ビーチボーイズ」なんか、毎年繰り返して見たいくらい好きですし。

そういう意味ではこの本、良かった。
夏っていいな、って思えたし。

それ以外にはいっぱいツッコみたいところが満載。
だけど、もう、いいや。(投げてるよ…)
なんだろな、おいら、ここんとこ、なんかヤサグレてんのかな(何ー?)。
いや!あの!
決して悪い本でも良くない本でも、ないんです!!
ただ、おいらの今の波長には合わなかった、てだけで。

「月が100回沈めば」

2008年06月15日 21時12分08秒 | ほぼ、文庫本 2008
月が100回沈めば/式田ティエン/宝島社文庫

タイトル買い。
…失敗、の巻。

例えば石田衣良の池袋ウエストゲートパークは、ブクロを舞台にした若者たちの、だけとは限らないな、若者たちの周りの大人も含めた日常の話。
の、渋谷バージョン、だとおいらは思ったの。
だが。
渋谷とブクロが違うことは想像できても、この作者がブクロではなく、んー、新宿でもなく、青山でもなく、原宿でもなく、銀座でも六本木でも
…そろそろ限界か(爆)
まあとにかく、渋谷に舞台を設定した。その意図が分からない。
いやまあ、分かる人には分かるんだろう、おいらには分からないだけだ。
で、そのことがずーっと気になってしまうことも、気に入らねえ。
多分渋谷も込みの話なんだろう。いやそれすらもうどうでもいいや…

ざっくり言えば、高校生が渋谷で、突然いなくなった友達を捜す(本当は彼が持ったままの自分の手帳が目的)話。
それぞれにキャラの立った(←)メンバーと知り合い、友達になり、事件を追う。
その過程で、結局は自分の、えー、こっ恥ずかしいんだけど生き様だ生き方だ信念だなんだかんだ、を捜す。
っていう、平たく言ってそういう話。

ここまでわざと書かずにきたけど、もう別にいいや書いちゃえ、
この話でキーなのは「普通」。
まあよくあるパターンで、彼等の普通ってなんだ?とか普通は作られた虚像か?とかまあそんなとこ。


んー、ミステリーなんだっけこういうの、なりの話の面白さ(あら、そうくるのか、的な)はあるけど
中には登場人物に語らせた、ちょっと面白い解釈とかもあったけど

…うわなんだこいつら。面白くねえ!


もちろん小説であるわけで、これがデフォルトだとは思ってないよ。
ないけど、
こんな書かれ方をするのが今の若者たち社会なんかなあ、
そういうふうに仕向けられてんのかなあ、
とか思わないでもなく、

あーだめだ。

とにかく、いろんなところでムカついたから
この本はとっととブックオ〇行き決定だ。


あ、
断っておきますが
あくまでおいらの感覚で、の話だから
これをすんごい面白いっていう人もいるの当たり前です。
ちゅうかむしろ、そっちの方が「普通」なんじゃないかな。



て書いた、その
「普通」
って、何?

「重力ピエロ」

2008年06月06日 22時47分15秒 | ほぼ、文庫本 2008
重力ピエロ/伊坂幸太郎/新潮文庫

伊坂幸太郎という人の作品が、どのジャンルに分類されるのか。
という質問は、誰に(或いはどこに)すればいいんだろう。

デビュー作の「オーデュボンの祈り」で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞、とあるから、ミステリーに入るのだろう。
でもその後、本作で「ミステリファン以外の読者からも喝采をもって迎えられ」とあるから、少なくとも本作(これね、重力ピエロ)はミステリーではないらしい。

食わず嫌いというか読まず嫌いというか、おいらはミステリーというジャンルに入る本、読まない。言い切りますここは。
2時間ドラマになってそうな話やん?いやそれはサスペンスだ、とか突っ込まないで。おいらにとっちゃ一緒なんだも…
シンプルに、おいらの好みじゃないんだも…

で、伊坂幸太郎。
確かに彼の話は、入り組んでいて、バラバラな話がいつの間にか同じ方向を向き始めて、最後の最後で一つになる、
その過程で、一つになるための根拠が述べられたり、繋がりを解説してあったり、時間軸を一つにして並走させたり…それがミステリーでは「謎解き」という行為らしいのだが。

おいらにとっちゃ、それもこれも、書かれた小説が終わりを迎える為の「(話の)展開」に過ぎないのだけれど。(つまり謎解きとは思ってない。)

そういう事を前提として、彼の本は、どれもこれも、人間をかなり深く掘り下げた小説、以外に分けられない。
そしてそういう本は、ミステリーだのファンタジーだのコメディだの、というジャンルをとっととすっ飛ばして、
ただ「小説」としてほしい。


って、しまった、こんなに引っ張る予定じゃなかったのに…



この本に出てくるのは、現状、父が癌(進行している)で入院中、母はすでに他界、という兄弟で、弟は父と血が繋がっておらず、その父親は母を強姦した未成年者。

そこに放火と壁の落書き(グラフィティアート)とが関連する事件が続き、
何の気なしにその事件を(初めは暇つぶしの探偵ごっこ、のはずだった)解明する、それこそ謎解きだ、をするうちに事件の本筋にがっつり巻き込まれ、
しまいには渦の中心になってしまってどうにもこうにも抜け出せなくなる。
その結果、弟の出生に纏わる圧倒的な真実が明らかに――――



と、ここまでなら間違いなくミステリーなのだが、
圧巻なのはここからだ。
放火と落書きと弟の出生、の真相が明らかになり、とてつもなく大きな真実として存在したとき、彼等が辿り着く結末が

「おまえは許されないことをやった。ただ、俺たちは許すんだよ」

もう、それまでなんか冴えなかったお兄ちゃん(酷っ)ブラボー!ハラショー!!マーベラス!!!
さらには、その圧倒的な真実を、事件の真相を、皆まで聞かずに(言わせずに)悟った父が言う

「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」

遺伝子がなんだ、DNAがどうした、染色体?二重螺旋?知ったことかよ!!お父さん万歳!だ。(落ち着けオレ)

特に、そのセリフを言うに至るまでの、父の病室での弟と兄と、父との対峙がすごい。心臓鷲掴みどころか、脳みそ亀甲縛り(こらこらこらこら!)だ。…どういう例えだよ…



ミステリーの何がどうって、どんなに複雑な事件でも、どんなに難解な謎解きでも、
解決させて、つまりは犯人が誰か、を解いて、事件の真相が細々と明らかになって、
…終わるところ。
終わるんだよ、信じらんない。
たかが事件一つが解決したからって何が終わるんだよ、終わらねえよ、むしろそこからが始まりだよ、そっちが知りたいんだよコノヤロー!
とか思うのはいけないことなのか?
そういうわけだからミステリーは読まないのだよ。

だけど、本作は、そこが、いい。
そうか、だからやっぱり、この話はミステリーじゃないんだ。