事故から7年間避難せずに一人家に残っている御婆さんの証言です。
最初この村に放射能があると言われたとき、かかったら死んでしまう病気だと思った。皆は避難して行ってしまい自分はたった一人取り残されて猫と暮らしている。爆発の数日後畑にセシュームが転がっていてきらきら光っていたこと。雨が降ったら流れてしまったこと。家々の前には残された犬や猫たちが飼い主の帰りを待っている。もう誰も帰って来ない。食料は警官がパンを定期的に届けてくれ、飼っている猫にも骨を持ってきてくれる。
そして彼女の言葉、「この世で一番公平なものは死です。まだお金でけりをつけた者はおりません。大地は皆を受け入れてくれる。善人も悪人も、罪深いものも。この世にこれ以上公平なものはありません。」
「私は寂しくなると墓地に行くんだ。あそこには、母も死んだ亭主も、娘もいるから。」
「私はね、目を閉じて村を歩き回るんです。彼らに話しかけるのです。ここには放射能なんかあるもんかね。ちょうちょが飛んでいるし、マルハナバチもぶんぶんいってるよ。家のワーシカもネズミを取っているよ」と言って泣く。
最後に作者に「ねえ、私の悲しみが分かってもらえるだろうかね?あんたが、皆にこの話をしてくれる頃には、わたしはもうこの世にいないかもしれないね。土の下、木の根っこの近くにおりますよ。」
放射能の恐ろしさをまざまざと感じる話です。皆様ぜひお読みください。