《北朝鮮、デノミ失敗で凍死者続出》
昨年11月30日の貨幣改革以降、激しいインフレに苦しんでいる北朝鮮が貨幣改革の失敗の責任を問い、朝鮮労働党の朴南基(パク・ナムギ)計画財政部長を電撃的に解任したことが伝えられた。
貨幣改革後、北朝鮮は主要都市の工場に布告文を掲げたという。
◆全ての機関でドルの使用を禁止する
◆必要なドルは国家銀行を利用すること
◆違法に外貨を使用した者は厳罰に処する
◆未申告者は処罰する
◆生活必需品の値札販売制度に違反した場合は物品を没収する
といった内容だ。
しかし、こうした警告にもかかわらず、住民たちの不満はとどまるところを知らない。100ウォンを1ウォンに交換する貨幣改革を行いながら、旧貨幣の交換限度額を50万ウォンに定めたため、それ以上を保有する商人や住民のカネが1日で紙切れとなった。
北朝鮮消息筋によると、貨幣改革による第2次ショックは昨年12月の月給支給時に起こった。労働者は1,500ウォン~2,000ウォン、保衛部や人民軍将校は平均月給3,000ウォンに1ヶ月分の給料に相当する現金をボーナスとして受け取ったためだ。
旧貨幣の基準とほぼ変わらない金額の月給を手にした労働者たちは戸惑った。月に5,000ウォンを受け取る北朝鮮幹部たちは旧貨幣で50万ウォン相当の月給を受け取り、1ヶ月間で月給が100倍に跳ね上がったことになる。
戸惑ったのも束の間、間もなく物価が天井知らずに上昇して市場が凍り付いた。時間が過ぎても商人は商品を売れなくなった。価格が正確に定まらない状況となったからだ。
さらに、国家保衛部・保安省(警察)を総動員して平壌の統一市場や平安南道平城市の市場を皮切りに全国の主要市場を閉鎖したため、混乱状態は極限に達している。また、昨年12月からはここ数年で最悪の寒波まで襲うというダブルパンチにも見舞われた。
挙げ句の果てに、北朝鮮の幹部階層が住む平壌のアパートに市場を通じて供給されていた石炭や薪等のエネルギー供給まで途絶え、凍死者が続出した。また、食糧価格の高騰により全国で餓死者が続出した。
最近北朝鮮を訪問した在中朝鮮人は
「60歳以上の高齢者たちはみな死にそうだ。このままではハイチ大地震での死者よりもさらに多くの人が寒波と飢餓で死ぬかも知れない」
と話した。
貨幣改革の一時的な被害者は商人だったが、国営企業の被害もそれに引けを取らない。
元幹部の脱北者は
「2002年7月の経営改善措置以降、北朝鮮の主要企業は名目が国営というだけで、実際は資本主義の形態に変わった」
と話した。これはどういう意味だろうか。
国家が企業を養う「計画経済」が破綻すると、北朝鮮当局は労働者を市場に追いやってそれぞれカネを稼ぐよう命じた。有能な労働者は一定の金額だけを企業に納めた。共産主義社会ではタブーとされる富の個人的蓄積が始まったのだ。
しかし、今回の貨幣改革でこうした企業や労働者は1日で破産した。これまで貯めた資金が紙切れとなり、賃金が旧貨幣基準で70倍~100倍に上昇。市場が麻痺したことで労働者への配給食糧が断たれてしまった。
貨幣改革以降、外貨使用禁止措置と主要為替商に対する検挙令が発令されると、大金を動かす党・政府・軍の主要外貨獲得機関にも非常事態が起きた。「集めたドルを北朝鮮ウォンに両替せよ」との指示が下されたためだ。各機関が保有していたドルが国家保有となったため、自由に使っていた主要機関による活動資金の流通が一斉に中断した。対外貿易取引も自由取引から内閣傘下の貿易銀行を通さなければならなくなり、対外事業も完全にストップした。
貨幣改革直後、1ドル=75ウォンで取引されていた為替レートは闇ドル市場で1ドル=500ウォンに達している。このまま行けば、1ドル=1,000ウォンを超えて旧貨幣基準で3,000ウォンまで進むと予測する人も多い。
北朝鮮の貨幣は信用出来ず、外貨使用も禁止されたため、人々は物々交換の時代へと回帰している。信用出来る相手には外貨をやり取りして販売するが、そうでない場合はそれ相応の物品で取引している。
こうした中、国家保衛部と人民保安署の要員たちは手際良く利益を得ている。違法なドル使用や商売を取り締まる権限を与えられた彼等は、取り締まりを口実としたドル稼ぎに必死になっているという。
最近国境を越えた脱北者は
「保衛部にドルの使用が見つかれば捕まってしまうため、その場で賄賂として渡すほうがましだ」
と語った。取り締まり要員は底辺層の商人だけでなく、北朝鮮幹部たちからも賄賂を受け取っている。
こうした不正な取り締まりを巡って、咸鏡南道咸興や咸鏡北道清津では悪徳要員たちが道端で暴行を受けたり殺害されるという事件が至る所て発生している。最近の金正日(キム・ジョンイル)総書記による「白米と肉のスープ」発言はこうした民心を宥めるためと分析されている。
今回の貨幣改革は内閣主導で進められたが、背後には朝鮮労働党の直接的な指導と全面的な支援があった。金総書記が最終決定を下して内閣の金英逸(キム・ヨンイル)首相が実務的な総指揮を執ったのだ。
貨幣改革の「副作用」が長期化の様相を見せる中、北朝鮮では金首相の「責任論」が浮上している。不満の矛先は金総書記に集中しているが、建前としては金首相が全ての罪を被り処罰を受ける可能性が高まっている。
元幹部の脱北者は
「今回の貨幣改革が一国の経済を完全に麻痺させたため、どんな対応を講じてもしばらくは混乱を避けられず、ややもすると体制崩壊に繋がる可能性もある」
と話した。
※「白米と肉のスープ」発言については過去の【みんな生きている】をご覧下さい。
あまりにも白々しい発言です。
昨年11月30日の貨幣改革以降、激しいインフレに苦しんでいる北朝鮮が貨幣改革の失敗の責任を問い、朝鮮労働党の朴南基(パク・ナムギ)計画財政部長を電撃的に解任したことが伝えられた。
貨幣改革後、北朝鮮は主要都市の工場に布告文を掲げたという。
◆全ての機関でドルの使用を禁止する
◆必要なドルは国家銀行を利用すること
◆違法に外貨を使用した者は厳罰に処する
◆未申告者は処罰する
◆生活必需品の値札販売制度に違反した場合は物品を没収する
といった内容だ。
しかし、こうした警告にもかかわらず、住民たちの不満はとどまるところを知らない。100ウォンを1ウォンに交換する貨幣改革を行いながら、旧貨幣の交換限度額を50万ウォンに定めたため、それ以上を保有する商人や住民のカネが1日で紙切れとなった。
北朝鮮消息筋によると、貨幣改革による第2次ショックは昨年12月の月給支給時に起こった。労働者は1,500ウォン~2,000ウォン、保衛部や人民軍将校は平均月給3,000ウォンに1ヶ月分の給料に相当する現金をボーナスとして受け取ったためだ。
旧貨幣の基準とほぼ変わらない金額の月給を手にした労働者たちは戸惑った。月に5,000ウォンを受け取る北朝鮮幹部たちは旧貨幣で50万ウォン相当の月給を受け取り、1ヶ月間で月給が100倍に跳ね上がったことになる。
戸惑ったのも束の間、間もなく物価が天井知らずに上昇して市場が凍り付いた。時間が過ぎても商人は商品を売れなくなった。価格が正確に定まらない状況となったからだ。
さらに、国家保衛部・保安省(警察)を総動員して平壌の統一市場や平安南道平城市の市場を皮切りに全国の主要市場を閉鎖したため、混乱状態は極限に達している。また、昨年12月からはここ数年で最悪の寒波まで襲うというダブルパンチにも見舞われた。
挙げ句の果てに、北朝鮮の幹部階層が住む平壌のアパートに市場を通じて供給されていた石炭や薪等のエネルギー供給まで途絶え、凍死者が続出した。また、食糧価格の高騰により全国で餓死者が続出した。
最近北朝鮮を訪問した在中朝鮮人は
「60歳以上の高齢者たちはみな死にそうだ。このままではハイチ大地震での死者よりもさらに多くの人が寒波と飢餓で死ぬかも知れない」
と話した。
貨幣改革の一時的な被害者は商人だったが、国営企業の被害もそれに引けを取らない。
元幹部の脱北者は
「2002年7月の経営改善措置以降、北朝鮮の主要企業は名目が国営というだけで、実際は資本主義の形態に変わった」
と話した。これはどういう意味だろうか。
国家が企業を養う「計画経済」が破綻すると、北朝鮮当局は労働者を市場に追いやってそれぞれカネを稼ぐよう命じた。有能な労働者は一定の金額だけを企業に納めた。共産主義社会ではタブーとされる富の個人的蓄積が始まったのだ。
しかし、今回の貨幣改革でこうした企業や労働者は1日で破産した。これまで貯めた資金が紙切れとなり、賃金が旧貨幣基準で70倍~100倍に上昇。市場が麻痺したことで労働者への配給食糧が断たれてしまった。
貨幣改革以降、外貨使用禁止措置と主要為替商に対する検挙令が発令されると、大金を動かす党・政府・軍の主要外貨獲得機関にも非常事態が起きた。「集めたドルを北朝鮮ウォンに両替せよ」との指示が下されたためだ。各機関が保有していたドルが国家保有となったため、自由に使っていた主要機関による活動資金の流通が一斉に中断した。対外貿易取引も自由取引から内閣傘下の貿易銀行を通さなければならなくなり、対外事業も完全にストップした。
貨幣改革直後、1ドル=75ウォンで取引されていた為替レートは闇ドル市場で1ドル=500ウォンに達している。このまま行けば、1ドル=1,000ウォンを超えて旧貨幣基準で3,000ウォンまで進むと予測する人も多い。
北朝鮮の貨幣は信用出来ず、外貨使用も禁止されたため、人々は物々交換の時代へと回帰している。信用出来る相手には外貨をやり取りして販売するが、そうでない場合はそれ相応の物品で取引している。
こうした中、国家保衛部と人民保安署の要員たちは手際良く利益を得ている。違法なドル使用や商売を取り締まる権限を与えられた彼等は、取り締まりを口実としたドル稼ぎに必死になっているという。
最近国境を越えた脱北者は
「保衛部にドルの使用が見つかれば捕まってしまうため、その場で賄賂として渡すほうがましだ」
と語った。取り締まり要員は底辺層の商人だけでなく、北朝鮮幹部たちからも賄賂を受け取っている。
こうした不正な取り締まりを巡って、咸鏡南道咸興や咸鏡北道清津では悪徳要員たちが道端で暴行を受けたり殺害されるという事件が至る所て発生している。最近の金正日(キム・ジョンイル)総書記による「白米と肉のスープ」発言はこうした民心を宥めるためと分析されている。
今回の貨幣改革は内閣主導で進められたが、背後には朝鮮労働党の直接的な指導と全面的な支援があった。金総書記が最終決定を下して内閣の金英逸(キム・ヨンイル)首相が実務的な総指揮を執ったのだ。
貨幣改革の「副作用」が長期化の様相を見せる中、北朝鮮では金首相の「責任論」が浮上している。不満の矛先は金総書記に集中しているが、建前としては金首相が全ての罪を被り処罰を受ける可能性が高まっている。
元幹部の脱北者は
「今回の貨幣改革が一国の経済を完全に麻痺させたため、どんな対応を講じてもしばらくは混乱を避けられず、ややもすると体制崩壊に繋がる可能性もある」
と話した。
※「白米と肉のスープ」発言については過去の【みんな生きている】をご覧下さい。
あまりにも白々しい発言です。