博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

石油を食べる

2008年07月15日 | 時事
 今日15日の朝日新聞の報道によれば、燃料価格の高騰に苦しむ全国の漁業者が朝から一斉休漁に入ったそうです。各地の港では漁船が係留されたままで、約20万隻が終日漁を休む。午前11時からは、東京・日比谷に全国から漁師ら約4千人が集まり、政府による燃油高騰分の直接補填などを求め、大会を開いた、とのことでした。
資料出所:http://www.asahi.com/business/update/0715/TKY200807150156.html
 この記事から分かることは、水産資源は、それを確保するために安価な石油(漁船の場合は重油)が必要であり、 日本は世界でも有数の水産資源を有する国であるにも関わらず安価な石油が無いと、水産資源を利用できないという事実です。つまり私たちは、ある意味では間接的に(魚を通して)石油を食べているともいえるわけです。
 別の報道では、魚の価格上昇が消費者の魚離れを引き起こすのではないかという危惧が表明されていました。しかし魚を食べずに例えば肉を食べるとしても、食肉生産のための飼料(トウモロコシなどの穀物)生産には、大量の石油が必要です。トラクターなどの農業機械の燃料は石油ですし、化学肥料や農薬も石油が無ければ作れません。やはり間接的に石油を食べていることには代わりが無い訳です。米や麦、野菜についても事情は全く同じです。
 昨年、日本の食料自給率が40%を割ってしまったことがニュースとして報道されました。また今年になって、中国からの輸入食品に有害物質が混入していたことが日本社会に衝撃を与えました。これらのことから食糧自給率の改善が社会的にも強く叫ばれるようになりました。
 しかし考えてみて下さい。牧畜を含む農業も漁業も石油が無ければ成り立たないのです。仮に近い将来、日本が食料を輸入できない事態に直面したとしましょう。それに備えて日本国内の農業・漁業生産を増やしていったとしましょう。食料が輸入できないのに石油は輸入できるという事態がありえるでしょうか?わが国は石油は99%輸入に頼っているのです。食料が輸入できない事態が生じたら、石油も輸入できなくなると考えるべきでしょう。太平洋戦争末期の日本が正にそういう状態でした(当時は農業生産に石油を今ほど使っていなかったにも関わらずです)。そうなれば農業・漁業生産も成り立たなくなります。つまり食料自給だけ考えても、意味がなさそうだということです。本当に食糧自給率を向上させるには輸入石油に頼らなくてもすむ農業・漁業に転換していく必要がある訳です。これは簡単なことではありません。
 有機無農薬農業にして、農作業も人力でやればよいという人もいるかもしれませんが、有機無農薬栽培が、そんな簡単なものではないことは知っている人は知っているでしょう。コストも手間も比較にならない位かかりますし、1億2千万人に供給するための量と質の担保は難しいと思われます。安価な石油の安定供給があったればこそ、日本は経済成長して今の人口になったわけですから。
 私が中学に入学した頃、石油タンパクという新しい技術の構想がありました。石油を酵母菌の栄養分として、育成した酵母を家畜の飼料にするという構想だったと記憶しています。「石油を食べる」という印象が消費者の忌避を引き起こしたのか、この話はその後立ち消えになりました。間もなく第一次オイルショックが起こったこともあって、すっかり忘れ去られましたが、今の私たちは実は石油を食べていたわけです。

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