博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

深海への挑戦

2023年06月25日 | 科学
(昨日の続きです)
 生身の人間は、どれくらいの深度まで潜水できるのでしょうか?それは2014年にエジプトの熟練ダイバーアーメド・ガーブル氏が紅海で打ちたてた深度332mが世界最高記録だそうです。アーメド氏はその日のために4年間過酷な訓練に励んだそうですから、一般市民に気軽にできることでないことは確かです。その日、アーメド氏のサポーターダイバーが随伴できた深度が100mだったそうなので、熟練ダイバーでもそのあたりが限界のようです。このように深海は気軽に人間が行ける場所でないことは確かです。
 人工の潜水装置を使用した深海への挑戦は、意外と古くから行われていたようで、古代ギリシャ・マケドニアのアレクサンダー大王が紀元前330年頃に地中海でガラス製の樽または釣鐘に入り海底を観察したという伝説があります。釣鐘型の「潜水鐘(ダイビング・ベル)」による潜水活動は16世紀頃から行われていたそうですが、潜水深度は20m位が限界だったようです。
 本格的な100mを超える深海への潜水に初めて成功したのは、1932年に生物学者のウィリアム・ビービ博士とエンジニアのオーチス・バートンによる潜水球(バチスフェア 上の写真です 注)による深度923mの到達が最初でした。つまり深度千m(には微妙に達していないのですが)という深海の入り口にようやく到達できたのは20世紀に入ってからだったということになります。この記録は第二次大戦後まで破られなかったそうです。潜水球は直径1.45m、2.54cm厚の鋳鋼でできた中空球体で石英ガラスの観察窓が付いており、現在の宇宙船で使用されているような呼吸用空気循環装置を装備していました。海上の母船から電力供給用電線と電話線を取り付けたケーブルで吊り上げ下げが行われていました。深度が深くなればケーブルも長くなり、その分重量が増していくため、この方法では到達深度に限界があります。第二次大戦後にバートン氏が改良した潜水球「ベントスコープ」でも深度1400m弱が限界だったそうです。この限界を超える自力航走可能な深海潜水艇バチスカーフがスイス(!)の物理学者オーギュスト・ピカール教授によって発明され、西アフリカ沖の大西洋で4500mの有人潜水に成功したのは1954年のことですから、割と最近の出来事だったということが分かります。
(注)https://divingmuseum.org/artofabyss/bathysphere/

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。