”What a wonderful world”わたしはこの歌を,70歳近くまで知らなかった。
初めて聴いたのは,高校同期生で元「ロイヤルナイト」のテナー歌手,楠瀬裕久君がライブで歌った時だった。素晴らしい歌に感動し,元歌は誰がとつぶやいたら,隣にいたやはり同期生のM・M子さんが「サッチモよ」と教えてくれ,ルイ・アームストロングが歌う”What a wonderful world”(この素晴らしき世界)が入ったMDを送ってくれた。カーステレオに収録し,運転の時に聴いていた。
昨夜,”What a wnderful world"と題するNHKスペシャルを観た。
ニューヨークはパンデミックで,すべてのライブスペースが閉鎖され,アーティストは屋外で演奏せざるを得なかった。そして,多くのアーティストが,この歌を希望の歌として演奏した。
”What a wnderful world"はジョージ・ダグラスが1967年,ベトナム戦争や公民権運動など,暗く混迷する世相を嘆き,目指すべき平和を願って作詞・作曲し,アームストロングが歌ったとされている。
この番組には,2人のアーティストが登場する。
1人は,グラミー賞をとったトランぺッターのキーヨン・ハロルド。昨年の12月,彼の息子が,ホテルで白人の女性から,黒人だからという偏見から,携帯電話を盗んだという濡れ衣を着せられ,大きく傷つけられる。
もう一人は,日本人のジャズピアニストの海野雅威。彼は14年前にアメリカにわたって,独力でニューヨークのジャズの世界で地歩を築いてきた。昨年の9月,地下鉄で8人の黒人の若者から15分間にわたって暴行を受け,右肩複雑骨折,鎖骨も折るという重傷を負う。日本で治療・リハビリの後,この災難に屈することなく打ち勝つために,今年の5月にニューヨークに復帰する。
2人に共通するのは,受けた恥辱や痛みに憎しみを抱くことではなく,音楽を通してそれを乗り越え,人々とつながり,”What a wnderful world"に歌う平和な世界を目指すという姿勢である。恥辱と痛みの中だからこそ表現できるという,新曲をリリースしている。ハロルドは"When it will stop”,いつこんなことが止むのかと訴えている。海野は”Life”で,人生は曲がったり折れたりするが壊れないと,宣言している。
What a wonderful world
I see trees of green, 緑の木々が見える
Red roses too. 赤い薔薇も
I see them bloom, 咲いているのが見える
For me and you. 僕と君のために
And I think to myself, そしてしみじみと思う
What a wonderful world. なんて素晴らしい世界だ
I see skies of blue, 青空が見える
And clouds of white. そして白い雲も
The bright blessed day, 明るくすがすがしい日
The dark sacred night. 暗く神聖な夜
And I think to myself そしてしみじみと思う
What a wonderful world. なんて素晴らしい世界だ
The colors of the rainbow, 虹の色が
So pretty in the sky. 美しく空に
Are also on the faces, 通りかかる人々の
Of people going by, 顔にも
I see friends shaking hands, 友達が手を振りながら
Saying, "How do you do?" 元気かい?と声をかける
They're really saying, 彼らは心から言っている
"I love you." 君が好きだよと
I hear babies cry, 赤ん坊の泣き声が聞こえる
I watch them grow, わたしは彼らの成長を見守る
They'll learn much more, かれらはわたしが知るよりも
Than I'll ever know. もっとたくさん学ぶだろう
And I think to myself, そしてしみじみと思う
What a wonderful world. なんて素晴らしい世界だ
Yes, I think to myself, 本当にそう思う
What a wonderful world. なんて素晴らしい世界だ
(和文は拙訳)