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博士の愛した教授法

2007年05月21日 | 雑記帳
 映画化された『博士の愛した数式』を視聴した。
 話題となった原作を2004年に読んだが、とても印象に残っている。
 別ブログにもメモをしていた

 原作とは違った味わいをみせながら、映画もなかなかよかった。
博士がルートに算数を教えるシーンが、職業柄印象に残る。これは原作と同じだった。

 文章題であれ単純な計算であれ、博士はまず問題を 音読させることからはじめた。
「問題にはリズムがあるからね。音楽と同じだよ。口に出してそのリズムに乗っかれば、問題全体を眺めることができるし、落し穴が隠れていそうな怪しい場所の見当も、つくようになる」

 実に的確な言葉だと思う。
 読むことの重要性、パターンを見抜くポイントの提示とでも言えばいいだろうか。

 原作を見直したら、こんなことも書いている。

 「筆算の跡も、消さずにきちんと残しておく方がいい」
 
 おいおい、音読のことといい筆算のことといい、これはいわゆる「向山型算数」で強調されてきたことそっくりそのままでなかったか。
 著者である小川洋子氏がそれを知っているわけはないだろうから、参考文献として挙げられている数学関係の書籍にもそうした手法のヒントがあると予想してみた。教授法の基本の一つといっていいのだろう。

 それにしても、静謐な文章の中に本質を散りばめる巧みさのある作家だなあと改めて感心した。
 教えるということで言えば、この文章も鮮やかだ。

 博士はルートをほめるのに、労力を惜しまなかった。(中略)ルートがどんなに愚かな袋小路に入り込んだ時でも、川底の泥から一粒の砂金をすくい上げるように、小さな美点を見出だした。



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