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ことばは頼りないから役に立つ

2019年06月18日 | 読書
 齢をとるにつれ注意して暮らすことは増えるが、多くの人が言う事の一つに「つまずかない」ことが挙げられる。骨折したりして寝たきりになると様々な支障が出る。治りにくい。些細だけれど、自分も気をつけねばと思う。思うけれども時々危ない瞬間がある。その頻度はきっと増えていく…とこれは下半身の話だが。


2019読了60
 『つまずきやすい日本語』(飯間浩明  NHK出版)



 ことばにつまずくとはどういうことか。ある程度予想できる。ただ書名にした著者の思いは「はじめに」の副題によく表れている。それは「『間違いやすい日本語』ではない」。一時期、日本語ブームの中で「間違いやすい」を冠した書もよく売れた。今も雑学的な番組等でそんな話題が取り上げられることも少なくない。


 それに対して著者はこう述べている。「あらゆることばが、ある場合には正しく、ある場合には間違いになってしまうという、その難しさを考えていきたい」。この姿勢に共感できる。かく言う私も現実には「その使い方は間違っている。正しくは…」と言いがちである。その指摘の持つ意味を時々考えてしまうことがある。


 「変化はことばの本質」と考察することから論は始まる。「つまずき」つまり、使った言葉がうまく伝わらず誤解を生むような理由は数々あるが、ことばの成り立ちや歴史を考えれば、当然起こり得る。「時間」「場所・場面」と章分けしながら、例示される。それらを乗り越え積み重ねて、今の言葉遣いが存在している。


 「ことばは頼りないから役に立つ」という逆説的な提示に心が響いた。ことばの持つ幅や曖昧さがあるおかげで、どれほど助かっているだろうか。真実をずばりと射るばかりでは息苦しい。つまずかないようにしたいが、つまずいたら起き上がればいい。誠意を持ってことばを尽くせばいい。それだけのことである。


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