すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

信用と優しさに徹する

2018年09月01日 | 読書
 40歳になる少し前、4週間ほど入院したことがあった。生死に関わる病気ではなかったが、二人の子どもは小さかったし人生の折り返し地点のような気もして様々に思い巡らしたことを覚えている。さて、著者は写真家で狩猟もする。30代半ばで一人息子はまだ2歳だ。そして、余命3年というガン宣告を受けている。


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 『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』(幡野広志 PHP)



 「息子自身の役に立つ言葉を残してあげたい」という気持ちでウェブ発信を始めたら話題になり、悩み相談なども持ちかけられるようになったという。その流れの延長で本が出版される。題名からわかるように、スタンスは「息子のための言葉」つまり決意。それは著者自身の生き方そのものを精一杯吐露する一冊だ。



 「〇〇について、僕が息子に…」という形で章立てされているが、全体としてややまとまりを欠く印象をうける。世代ギャップなのか、私個人は「子どものころ、ほしかった親」というイメージは持てない。そこまで想いが及ぶような時代、環境に育たなかったからか。その意味で、著者は早くから自立していた存在だ。


 といっても共感・首肯できる考え方はいくつもあった。「夢というのは、職業のその先にあるものだ」…「スポーツ選手になりたい」「政治家になりたい」と語るのは正直で微笑ましいが、実は「何のため」という底が意識できないままに膨らめば、結局金や名誉などに手足を絡められていく。今、そんな輩は溢れている。


 特にこの考えにはパワーを感じた。「『お金がない』というのは、何かができない言い訳として、もはや弱いと僕は思っている。」社会構造としての貧困問題はまた別の要素として、個の行動を貫き伸ばすために「信用」「優しさ」というアプローチに徹していけば、切り拓ける環境は芽を出している。それを教えられた。