すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

なんで「なんで」なんか使うのだ

2007年07月05日 | 雑記帳
 低学年の国語を参観していて、あることばが耳についた。
 好きな本の紹介をし、それに対して質問したり答えたりするというよくあるパターンだ。
 ある子が質問のときに、こう言った。

 「なんで、その本が好きなのですか」

 えっ「なんで」か…ことさらにすぐ修正しなくても、他の誰かが「なぜ」や「どうして」を使えば直っていくだろう…と高をくくっていたら、あらなんといくら待っても「なんで」が連発されることになった。
 あれ、もしかしたら「なんで」でもいいの。いやそんなことはないだろう。どう考えても「なんで」は公的な感じのする言葉ではない。全体における発表や質問のときに使う言葉ではない、それに続けてそのことばを聴いていると、どうもいい感じがしない…
 なんでだろう?

 授業が終わり、「なんで」追究作戦に入る。
 まず愛用の電子辞書(広辞苑)で調べると

 なんで【何で】なんのために。なぜ。どうして。

とある。あれっ、それだけか。「新明解」ではどうだろうか。

 なんで【何で】①どんな理由があってそうする(である)のかを確かめたり、疑問に思ったりすることを表す ②手段・方法を確かめたり、疑問に思ったりすることを表す

 確かに詳しいが、これでも「なぜ」と変わりないではないか。解決できないので、類語大辞典(講談社)に頼ることにする。やはりそこにはある程度納得できる説明がある。並べてみるとなかなかおもしろい。

 [何で]   …「なぜ」のくだけた言い方
 [どうして] …「なぜ」の、やや柔らかい言い方
 [なにゆえ] …「なぜ」の古めかしい言い方
 [なぜ]   …どういう理由で、そうなるのか(なった)のか理解できず、問うたり考えたりするときに用いる語

 この比較からは「なぜ」「どうして」がふさわしい用語だということがわかる。

 ところでもう一つ、「なんで」があまりいい感じがしないのには何かわけがあるのだろうか。
 大辞泉(小学館)を引いたら、二番目の意味としてこんなことが書いてある。

 ②反語表現に用いて、強く否定する意を表す 

 「なんで泣かずにいられようか」などという古めかしい例文も載っているが、それはともかく「否定」の二文字にインパクトがある。今まで調べた辞典の例文を集めてみると

 「なんでけんかなんかしたのだ」
 「なんでおまえは、そう弱気なんだよ」
 「なんでそんなことをするのだ」

 つまり最初の意味であっても問い詰める形の使い方が典型であり、相手の行為の否定がそこに込められていることがわかる。例文に似た言葉を使ったことのある教師は案外多いだろう。また、逆の設定もある。乱暴な行為をする子を止めたときに「なんで?」と強い言葉で返された経験を持つ人は結構多いのではないか。

 「なんで」という私的な言い方には、日常の否定的ニュアンスがつきまとうことが、落ち着かないわけだったか。
 「なんでだろう♪」というお笑いコンビの歌があったが、これも遠まわしながら、否定的ではあるがよくしてしまいがちな行為を客観化して笑うという(くどい)説明ができると思う。

 「なんで」でこんなに引っぱれるとは思わなかった。
 
 「なんで、朝からこんなことを書いているの」と言いたい自分も確かにいます。