ディヒター――「詠うもの」という名の自称・詩人について、その素性に詳しい人間は少ない。
「ディヒターかぁ。……地味だよな」
格闘バカと称される少年の返答は、ちょっとずれていた。
「そういえば、結構謎だらけよね。まあ、シュトラールさんの知り合いだって言うし、悪い人ではないと思うけど」
正直な物言いをする狩人の少女は、少々考え込んでいた。
「うーん。あれくらいの歳のヒュームにしては珍しいくらいに覇気がないよねー」
何事か研究中だったタルタルの魔道士は、半ば上の空でそう答えた。
「意外と同類って感じもすんだよなぁ。とりあえず、見てくれより遥かに“できる”ぜ?」
宿の用心棒もしているという同族の女性は、麦酒を呷りながらそう言った。
「過去を捨てた人間など、この稼業、そう珍しくもあるまい?」
ヒュームの刀使いは、それ以上を黙して語ろうとはしなかった。
「――そんな感じで、誰に聞いても詳しいことは分からないんですよねぇ」
聞き込みに使ったメモを片手に、彼を知る人物から聞き出した情報を伝える。
そのどれもが曖昧で要領を得ない情報ばかりであり、ディヒターと言う人物の素性を知るには全体的に決定力不足なものだった。
その結果に、今、自分の目の前に座ったニノさんが、腕を組む。
「むう。格別無理に他人の過去を暴こうなどとは思わぬが、こうも不鮮明じゃと逆に気になるのぉ」
そう言って、ニノさんはメモをこちらから受け取る。
聞き込みで得られた情報を一から読み返しているが、そもそもとして彼のことについて話を聞ける相手が少なく、情報の量自体大したものではない。故に、その読み返しもすぐに終わった。
「……情報不足。じゃな」
やれやれ、とでも言った感じで椅子に腰掛けなおすニノさんからメモを受け取る。
そのメモをぱらぱらとめくりながら、思いついたことを適当に述べてみることにした。
「ナーハさんが『同類かも』って言ってますけど、これってどういう意味でしょうかね?」
ここ数日、酒場の隅に陣取って「退屈だ」と繰り返している同族の戦士を思い浮かべる。
彼女の『同類』。彼女とロイさんは過去、ある傭兵LSに所属していたことがあるという。それについて言っているとしたら、ディヒターさんもまた、傭兵だったということだろうか?
「同業。ではなく、同類と言ったのじゃろう? ならば、単にそういう類のLSに属していた気がする。といった程度ではないか?」
と、ニノさんが言う。
確かに。傭兵LSなどの特定の技能者による「組合的」な組織というものには、どこかしら共通した雰囲気のようなものがある。と聞いたことがある。
「とすると、ディヒターさんも何らかの組織のようなものに属していたかも知れない。と?」
「さあのぉ。とりあえず、確たる何かが分からん限り、何もかも憶測にしかならんがの」
そう言うと、ニノさんは立ち上がった。
階段――二階にある部屋に向かうニノさんの背を見ながら、少し考える。
(仮にそうだとしたら、ディヒターさんはどんな組織に属していたんでしょう)
と。
「これミセリ。わしゃ先に寝るぞ」
ニノさんの声に、思考を終了させる。
事実がどうであれ、今それを考えても仕方がないというのは、今さっきニノさんから諭されたばかりだ。
階段を上る銀の髪を追い、自分も酒場を後にする。
あるいは、彼の旧知であるというシュトラールなる人物に会えば、真実が分かるのだろうか。そんなことを考えながら。
ともあれ。今の彼がすべてなのだろう。
一歩を引いた傍観者。それが、自分から見た“詠うもの”である。
○
はい。とりあえずネタのあるうちに書いておきましょう。
(ふむ。全キャラ分やるつもりか? だれるぞ)
それもそうなんですけど。ひとりやったら一応皆やっておきたいじゃないですか。
(そういうもんかのぉ)
自分はそうですねぇ。
で、前回のは自分から見てもそこそこな出来だったわけですが、今回のこれは……微妙ですねぇ。
(前回のあれがまぐれじゃった。というわけじゃろ)
そんな気がしないでもないんですよねぇ。最初書きたいと思ったように書けましたしね。前回のは。
今回のこれも、最初は前回と同じようにディヒターにミセリが尋ねる形で、シャオかロイのでもやろうと思ってたんですけど。
それだとあまりにも似たような感じになってしまって面白くないかな~。と、こんなんなりました。
(どちらが賢明かと問われれば……微妙なところじゃな。前回の形で上手くいけたかも知れんのなら、そちらの方が良かったかも知れんし、あるいはこちらにして正解だったかも分からんし)
まあ、どっちかしか完成しない以上、比べようにも。って感じなんですけどねー。
(まあそうじゃな)
「ディヒターかぁ。……地味だよな」
格闘バカと称される少年の返答は、ちょっとずれていた。
「そういえば、結構謎だらけよね。まあ、シュトラールさんの知り合いだって言うし、悪い人ではないと思うけど」
正直な物言いをする狩人の少女は、少々考え込んでいた。
「うーん。あれくらいの歳のヒュームにしては珍しいくらいに覇気がないよねー」
何事か研究中だったタルタルの魔道士は、半ば上の空でそう答えた。
「意外と同類って感じもすんだよなぁ。とりあえず、見てくれより遥かに“できる”ぜ?」
宿の用心棒もしているという同族の女性は、麦酒を呷りながらそう言った。
「過去を捨てた人間など、この稼業、そう珍しくもあるまい?」
ヒュームの刀使いは、それ以上を黙して語ろうとはしなかった。
「――そんな感じで、誰に聞いても詳しいことは分からないんですよねぇ」
聞き込みに使ったメモを片手に、彼を知る人物から聞き出した情報を伝える。
そのどれもが曖昧で要領を得ない情報ばかりであり、ディヒターと言う人物の素性を知るには全体的に決定力不足なものだった。
その結果に、今、自分の目の前に座ったニノさんが、腕を組む。
「むう。格別無理に他人の過去を暴こうなどとは思わぬが、こうも不鮮明じゃと逆に気になるのぉ」
そう言って、ニノさんはメモをこちらから受け取る。
聞き込みで得られた情報を一から読み返しているが、そもそもとして彼のことについて話を聞ける相手が少なく、情報の量自体大したものではない。故に、その読み返しもすぐに終わった。
「……情報不足。じゃな」
やれやれ、とでも言った感じで椅子に腰掛けなおすニノさんからメモを受け取る。
そのメモをぱらぱらとめくりながら、思いついたことを適当に述べてみることにした。
「ナーハさんが『同類かも』って言ってますけど、これってどういう意味でしょうかね?」
ここ数日、酒場の隅に陣取って「退屈だ」と繰り返している同族の戦士を思い浮かべる。
彼女の『同類』。彼女とロイさんは過去、ある傭兵LSに所属していたことがあるという。それについて言っているとしたら、ディヒターさんもまた、傭兵だったということだろうか?
「同業。ではなく、同類と言ったのじゃろう? ならば、単にそういう類のLSに属していた気がする。といった程度ではないか?」
と、ニノさんが言う。
確かに。傭兵LSなどの特定の技能者による「組合的」な組織というものには、どこかしら共通した雰囲気のようなものがある。と聞いたことがある。
「とすると、ディヒターさんも何らかの組織のようなものに属していたかも知れない。と?」
「さあのぉ。とりあえず、確たる何かが分からん限り、何もかも憶測にしかならんがの」
そう言うと、ニノさんは立ち上がった。
階段――二階にある部屋に向かうニノさんの背を見ながら、少し考える。
(仮にそうだとしたら、ディヒターさんはどんな組織に属していたんでしょう)
と。
「これミセリ。わしゃ先に寝るぞ」
ニノさんの声に、思考を終了させる。
事実がどうであれ、今それを考えても仕方がないというのは、今さっきニノさんから諭されたばかりだ。
階段を上る銀の髪を追い、自分も酒場を後にする。
あるいは、彼の旧知であるというシュトラールなる人物に会えば、真実が分かるのだろうか。そんなことを考えながら。
ともあれ。今の彼がすべてなのだろう。
一歩を引いた傍観者。それが、自分から見た“詠うもの”である。
○
はい。とりあえずネタのあるうちに書いておきましょう。
(ふむ。全キャラ分やるつもりか? だれるぞ)
それもそうなんですけど。ひとりやったら一応皆やっておきたいじゃないですか。
(そういうもんかのぉ)
自分はそうですねぇ。
で、前回のは自分から見てもそこそこな出来だったわけですが、今回のこれは……微妙ですねぇ。
(前回のあれがまぐれじゃった。というわけじゃろ)
そんな気がしないでもないんですよねぇ。最初書きたいと思ったように書けましたしね。前回のは。
今回のこれも、最初は前回と同じようにディヒターにミセリが尋ねる形で、シャオかロイのでもやろうと思ってたんですけど。
それだとあまりにも似たような感じになってしまって面白くないかな~。と、こんなんなりました。
(どちらが賢明かと問われれば……微妙なところじゃな。前回の形で上手くいけたかも知れんのなら、そちらの方が良かったかも知れんし、あるいはこちらにして正解だったかも分からんし)
まあ、どっちかしか完成しない以上、比べようにも。って感じなんですけどねー。
(まあそうじゃな)