カイン=ドゥルヒ=ゼッツェンと言う少年を一言で表すとすると、どんな表現が適切だろうか?
「カイン? バカで充分だと思うけど。ギルの大切さをもう少し理解してくれると嬉しいわね」
彼の仲間である、エルヴァーンの少女ならば、こう言うだろう。
「中々独創的な発想してて、面白いよねー。一回解剖して頭覗いてみたいなー、なんてね」
小さな魔法学者は笑ってそう言うかも知れない。
「まぁ、見込みはあるんじゃねーの? 素手でやり合ったら勝てねーかもな」
酒と戦いのことしか頭にないミスラの傭兵がそう嘯くのを聞いたことがある。
「己を曲げることを知らず――それ故に、強いとも言えるのかも知れんな……」
寡黙な侍は酒を片手にそう呟いた。
「で、結局そんな感じの人なんですか?」
オス猫を名乗るミスラの青年が聞いてくる。
特にすることもなく、何となく一緒に昼食を食べていたら尋ねてきたのだ。カインとはどんな人物なのか。と。
カインと特に近しいだろう人物の評価を告げれば、「なるほど」と頷いていた。視線や仕種を見ていた限りでは、興味は目の前に置かれた『山菜定食』に注がれていたようだが。
そして、今。定食を口に運びながら、彼は私自身の意見を求めている。
少し、考える。左手で撫でた顎からは、かすかに無精ひげの感触がする。思考していて、気がつくとこうしていることが多い。自分ではよく分からないが、もしかしたら私の癖なのかもしれない。
今度ケーパ・クッパにでも聞いてみようか。と思いつつ、思考がずれたな。と思う。
再度考えて、私は私の表現を口にした。
「――君に似ているかも知れないな。育った環境が独特だと、感性も独特なものになるのかも知れん」
以前聞いた青年の生い立ちを思い出しながら、言う。
「?」
言った意味が伝わらなかったのだろう。青年はきょとんとしている。
まあ、意識して曖昧な表現にしたから、伝わらなくても仕方がないことかも知れないが。
「なるほどの」
代わりに反応したのは、青年の隣に腰掛けた赤い眼の少女だ。
色素の薄い肌や銀の髪。それとは対照的な黒づくめの衣装に身を包んだ少女は、先ほどから何を口にするでもなく気だるげに、こちらや青年、時折窓の外や店内の喧騒にも視線をやり眺めている。
その少女は、どうやら私の言った意味を理解したらしく、ややげんなりとした視線を青年へと向けた。
「そいつは大変じゃな……お主等も」
限りない実感と同情のこもった言葉。溜息が一緒についてこないのが不思議なくらいである。
「……何だかよく分かりませんが。大変そうですね」
真面目な顔をして言ってくる青年に、苦笑。
少女は額に手をやり、青年から視線を外した。
「お気遣い、どうも」
これだから、どれだけ振り回されようと、彼らを憎めないのだろう。
そんなことを思いつつ、ぬるくなった麦酒を一口あおった。
「……平和だねぇ」
「……まったくじゃ」
窓から見上げた空は、青い。
○
というわけで、師匠のところに掲載していただいている駄作『アルタナの寵児たち』のオマケ話みたいなものです。
(これに出て来る「ニノ」とわしは別物じゃから、そこだけは留意しとくようにの)
でまあ、あちらに掲載していただいたものは、無駄に長いわりに話はぐだぐだしてて、おまけに登場人物のキャラ立てがまるでできていない。ということで、こちらのオマケ話ではその辺の補足とかを主にやっていくかと。
あとは思いつきだけの短文とか。
(痛い話じゃがな)
それを言われると自分何もできなくなってしまいますから……。
(現実を見つめることも、大事なことじゃぞ?)
「カイン? バカで充分だと思うけど。ギルの大切さをもう少し理解してくれると嬉しいわね」
彼の仲間である、エルヴァーンの少女ならば、こう言うだろう。
「中々独創的な発想してて、面白いよねー。一回解剖して頭覗いてみたいなー、なんてね」
小さな魔法学者は笑ってそう言うかも知れない。
「まぁ、見込みはあるんじゃねーの? 素手でやり合ったら勝てねーかもな」
酒と戦いのことしか頭にないミスラの傭兵がそう嘯くのを聞いたことがある。
「己を曲げることを知らず――それ故に、強いとも言えるのかも知れんな……」
寡黙な侍は酒を片手にそう呟いた。
「で、結局そんな感じの人なんですか?」
オス猫を名乗るミスラの青年が聞いてくる。
特にすることもなく、何となく一緒に昼食を食べていたら尋ねてきたのだ。カインとはどんな人物なのか。と。
カインと特に近しいだろう人物の評価を告げれば、「なるほど」と頷いていた。視線や仕種を見ていた限りでは、興味は目の前に置かれた『山菜定食』に注がれていたようだが。
そして、今。定食を口に運びながら、彼は私自身の意見を求めている。
少し、考える。左手で撫でた顎からは、かすかに無精ひげの感触がする。思考していて、気がつくとこうしていることが多い。自分ではよく分からないが、もしかしたら私の癖なのかもしれない。
今度ケーパ・クッパにでも聞いてみようか。と思いつつ、思考がずれたな。と思う。
再度考えて、私は私の表現を口にした。
「――君に似ているかも知れないな。育った環境が独特だと、感性も独特なものになるのかも知れん」
以前聞いた青年の生い立ちを思い出しながら、言う。
「?」
言った意味が伝わらなかったのだろう。青年はきょとんとしている。
まあ、意識して曖昧な表現にしたから、伝わらなくても仕方がないことかも知れないが。
「なるほどの」
代わりに反応したのは、青年の隣に腰掛けた赤い眼の少女だ。
色素の薄い肌や銀の髪。それとは対照的な黒づくめの衣装に身を包んだ少女は、先ほどから何を口にするでもなく気だるげに、こちらや青年、時折窓の外や店内の喧騒にも視線をやり眺めている。
その少女は、どうやら私の言った意味を理解したらしく、ややげんなりとした視線を青年へと向けた。
「そいつは大変じゃな……お主等も」
限りない実感と同情のこもった言葉。溜息が一緒についてこないのが不思議なくらいである。
「……何だかよく分かりませんが。大変そうですね」
真面目な顔をして言ってくる青年に、苦笑。
少女は額に手をやり、青年から視線を外した。
「お気遣い、どうも」
これだから、どれだけ振り回されようと、彼らを憎めないのだろう。
そんなことを思いつつ、ぬるくなった麦酒を一口あおった。
「……平和だねぇ」
「……まったくじゃ」
窓から見上げた空は、青い。
○
というわけで、師匠のところに掲載していただいている駄作『アルタナの寵児たち』のオマケ話みたいなものです。
(これに出て来る「ニノ」とわしは別物じゃから、そこだけは留意しとくようにの)
でまあ、あちらに掲載していただいたものは、無駄に長いわりに話はぐだぐだしてて、おまけに登場人物のキャラ立てがまるでできていない。ということで、こちらのオマケ話ではその辺の補足とかを主にやっていくかと。
あとは思いつきだけの短文とか。
(痛い話じゃがな)
それを言われると自分何もできなくなってしまいますから……。
(現実を見つめることも、大事なことじゃぞ?)