2 市政変革について
次に、強きを助け、弱きをくじく政治からの転換を求め、二つ質問します。
令和6年度5月15日号の市政だよりには、「ない袖は振れない」とし、「ひと肌脱いで」と市民に協力を求める、市長の手書きの手紙が掲載されました。何か戦前の「欲しがりません、勝つまでは」を想起します。福祉や文化教育など市民要望に応えたいが、金がないから我慢してと、また、北橋市政並みの行政サービスが必要なら、痛みを我慢しろと言っているように感じます。
しかし、袖がないと言いながら、オフィス移転、企業誘致、企業の付加価値向上などに、ない袖を振っています。バックアップ首都構想と言っても、お金で呼び込んでいるだけです。お金で企業や人を呼び込んで、どういう街を作るのでしょうか。北九州のポテンシャルはお金でしょうか。違います。
北九州のポテンシャルは、地理的優位性、災害リスクの低さ、道路・港湾・鉄道・空港などの整ったインフラ、ものづくりから理工系までの人材、オフィス賃料や生活費などの安さであり、他にも、食べ物が美味しい、人情に厚い、祭りなど地域が熱い、自然や観光資源が多いなどです。企業もそのメリットを理解して来ている訳で、さらにお金を出す必要はありません。
市の借金の多さも、結局は道路網や港湾などの整ったインフラに活かされているものであり、市民だけでなく、その恩恵を受ける企業にもある程度、過去の投資に対する負担をしてもらう考えも必要です。
また、億単位の企業誘致のインセンティブのために、子ども達が犠牲になっていることも本末転倒です。美術館や平和のまちミュージアムのツアー事業の廃止や、部活動の全国大会等への派遣補助費や部活動振興事業費の減額、私立学校や朝鮮学校への僅かな補助金すら削減したことなどです。
先の2月議会の付帯決議では、それらの予算が廃止又は大幅に削減されたとし、子どもや保護者の意見が十分反映されていないと指摘しています。
同じく付帯決議で指摘された草刈り費用は、削減された分がこの6月議会で補正予算として提案されていますが、子どもに係る予算の増額補正がありません。
企業誘致のインセンティブをやめ、市のポテンシャルの恩恵を受ける進出企業に応分の負担を頂きながら、2月議会で減らされた子どもの予算も早急に手当すべきです。見解を伺います。
最後に、本社移転や企業誘致、袖を振るための財源についてです。
高度成長期を牽引した企業の多くは創業者でもある経営者が中心であり、そのバイタリティーで事業を拡大して来ました。しかし、近年は代も変わり、経営者よりも株主中心の企業経営に変わっています。以前の従業員の暮らしや、地域経済の発展に重きを置いていたものが、株価を上げるための大量解雇や、正社員から派遣社員への入れ替えなど、地域経済を疲弊させています。
企業の都合による工場や拠点の撤退も地域に大きな影響を与えており、昨年、戦艦大和を作った広島県の呉製鉄所の閉鎖は地域に激震を与えました。
本市には多くの名だたる企業が立地しており、TOTO、安川電機、三井ハイテック、タカギ、第一交通産業などは、創業の地である北九州市に本社を置いていますが、他にも本市にルーツを持つ企業がたくさんあります。
一方、日本製鉄は起業の地・八幡にあった本社を東京に移し、JR九州も創業の地、ゼロポイントのある門司から博多に移転しました。三菱・住友を凌ぐ財閥でもあった鈴木商店が門司で創業・事業展開した会社にルーツを持つ企業は、旧帝国麦酒のサッポロビール、ニッカウヰスキー、神戸製鋼所、ニップンなど多岐に渡ります。西鉄の前身は九州電気軌道で、門司・八幡大蔵間で事業を開始しました。戸畑鋳物はのちの日産自動車であり、テレビ西日本は八幡発祥ですが、皆、本市に本社がありません。
北九州で生まれ、北九州で世話になり、北九州で成長し、北九州が傾きかけたら、はい、さようなら。なんて義理・人情に欠けることでしょう。
私は、創業者の原点に還り、みんな、創業の地、出生の地に帰って来いと言いたいです。しかし、現状で本社移転をお願いしても無理でしょう。しかし、北九州市がこれら企業の大株主であれば、無視できないのではないでしょうか。
今、世界的な株高や新NISAによる国内での個人投資の拡大で、多くのお金が流れ、その運用益でもかなりの額に上ります。本市でも基金運用で年間6億ほど運用益があるようですが、本市財政を支えるまではありません。また、テレビ西日本などの若干の民間企業の株式を保有していますが、経営に対する影響力はありません。
今後、公共インフラとも言うべきJR九州や西鉄、九州電力などの企業や、多くの市民が雇用されている地元企業の株式を保有することにより、市民生活や地域経済を守るために、行政としても、株主としても、地元企業に影響力を持つ戦略が必要ではないでしょうか。
そこで、市が出資する投資ファンドを作り、本市のSDGsのビジョンに賛同する企業や投資家の資金を集め、市の発展に資する企業や本市ルーツの企業に投資し、その運用益の一部を市民生活に活用する。また、本社を市外へ移した企業には帰って来てもらう。
また、誘致した企業を支援するならば、お金のインセンティブではなく、株式取得により、その企業の発展を内側から支えるなど、発想を変えるべきです。
もう、企業にペコペコする時代は終わり、市民を泣かす経営者がいれば、大株主・北九州市として、社長の首を飛ばす。それぐらいの気合いでやらないと市民生活や地域経済は守れません。
以上、(仮称)北九州ファンドの運用による市民への還元。株式取得による影響力行使で、本社移転や地元経済への貢献。誘致企業の本市ポテンシャルへの応分の負担などで、子ども達を誰一人見捨てない、強きを励まし、弱きを助ける政治の実現、お金の流れの根本的な変革について、市長の見解を伺います。