ベロニカが“おじいちゃんの鳥”と呼んだ黄金の流線型は、確かに羽ばたいた。そこには、ないはずの翼で。
「──あっ」
「見えた? ニコ」
「うん……」
ニコラスは、錯覚ではないかと目をしばたたかせる。自分の目に映ったものが、にわかには信じられなくて。
「なんだ、今のは」
「緑の山並が見えたでしょ? その“鳥”の、翼の向こうに」
「そうなんだ。見たこともないような、あざやかな深い緑の山が」
「このへんの景色とは全然違う……」
「あたしにも、見えた」
エストが、シルクロを抱き上げたままで、こともなげに言う。
「きれいなのね。北の山並って」
ベロニカとニコラスは、はっとしてエストに目をやった。まぎれもなく自分たちの子どもではあるけれど、その昔ふたりを結び合わせた泉の女神につらなるこの娘の力は、ごたくを並べず受け入れるしかない。
「北の山並……」
「じゃ、その山と鳥が写った写真を見ていたということは、ティトは北の山の人間……? ぼくは都会育ちなんだとばかり」
「わたしもそう思っていたわ。いつもおしゃれなものを身につけていたし、流行にも敏感だったし」
祖父をひとわたり懐かしんでから、ベロニカは言葉を切った。
「あ……でも」
「なんだい?」
「もしかしたら、おじいちゃんの家族がお葬式に来なかったことと、関係あるのかも」
「それはどうかな……。うん?」
ニコラスが耳を澄ませる。
「何か、曲が聴こえないかい?」
「──あっ」
「見えた? ニコ」
「うん……」
ニコラスは、錯覚ではないかと目をしばたたかせる。自分の目に映ったものが、にわかには信じられなくて。
「なんだ、今のは」
「緑の山並が見えたでしょ? その“鳥”の、翼の向こうに」
「そうなんだ。見たこともないような、あざやかな深い緑の山が」
「このへんの景色とは全然違う……」
「あたしにも、見えた」
エストが、シルクロを抱き上げたままで、こともなげに言う。
「きれいなのね。北の山並って」
ベロニカとニコラスは、はっとしてエストに目をやった。まぎれもなく自分たちの子どもではあるけれど、その昔ふたりを結び合わせた泉の女神につらなるこの娘の力は、ごたくを並べず受け入れるしかない。
「北の山並……」
「じゃ、その山と鳥が写った写真を見ていたということは、ティトは北の山の人間……? ぼくは都会育ちなんだとばかり」
「わたしもそう思っていたわ。いつもおしゃれなものを身につけていたし、流行にも敏感だったし」
祖父をひとわたり懐かしんでから、ベロニカは言葉を切った。
「あ……でも」
「なんだい?」
「もしかしたら、おじいちゃんの家族がお葬式に来なかったことと、関係あるのかも」
「それはどうかな……。うん?」
ニコラスが耳を澄ませる。
「何か、曲が聴こえないかい?」
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