271828の滑り台Log

271828は自然対数の底に由来。時々ギリシャ・ブラジル♪

有名な「焚書」

2014-03-15 15:54:15 | 読書
この記事を書くきっかけはあの「アンネの日記損壊事件」で、さらにとねさんの勇気ある記事に続こうと思ったのでした。実は私はこの『アンネの日記』を読んだことがありません。私の少年時代はアンネという女性の名前が商品名として使われ始めた頃で、読むのがちょっと恥ずかしかったのです。そんな感情も失せてしまった年になったので、前橋の紀伊国屋書店に行きました。書架にたった一冊だけ文春文庫が残っていました。売れているのでしょう。ご丁寧に透明なカヴァーが施されています。コミックの立ち読み防止のためにしてあるフィルムですね。事件の後なので、書店の防衛策かもしれません。
帰宅して、人類の知的遺産に対する損壊事件(言論弾圧)について思いを巡らすと、まず思いつくのが秦の始皇帝の焚書坑儒(-213年)でした。目を西に転ずると「アレクサンドリア図書館」の喪失。


この映画も見逃したのでTSUTAYAでDVDを借りて視聴したいです。ただこの映画のヒロイン(ヒュパティア)がネオプラトニストだったというのはちょっと信じられない気がしてなりません。というのはディオゲネス・ラエルティオスの『ギリシア哲学者列伝』に以下のような記述があるのです。

ところで、アリストクセノスが『歴史覚書』の中に記しているところによると、プラトンは、集めることができたかぎりのデモクリトスの書物を燃やしてしまおうとしたが、ピュタゴラス派のアミュクラスとクレイニアスが、そんなことをしても何の益にもならない、それらの書物はすでに多くの人たちの間に出回っているのだからと言って、プラトンにそのことを思いとどまらせたとのことである。しかし、プラトンがそうしようとしたのは明らかである。なぜなら、プラトンは昔の哲学者たちのほとんどすべての人に言及しているのに、デモクリトスには一度もはっきりとと言及していないばかりか、デモクリトスに対して何らかの反論をする必要がある場合にさえも、言及していないからである。それというのも、明らかにプラトンは、哲学者たちのなかで最もすぐれた者になろうとすれば、デモクリトスが自分にとっての競争者となることをよく知っていたからなのである。(岩波文庫『ギリシア哲学者列伝』下巻128ページ)

日下部吉信さんの編訳『初期ギリシア自然哲学断片集③』(ちくま学芸文庫)にはデモクリトスに言及している断片が多数集められていますが、プラトンがデモクリトスについて述べたことばは一つもありません。アリストテレスの反論はごっそりあるのに、まったく見事と言うしかありません。私はアリストテレスとプラトンの学者としての格の違いと理解しています。

アンネの日記損壊事件の犯人が逮捕されたようですが、ある放送作家のように犯人を「人間のクズ」と言って片付けてはいけないと思っています。多くの人間は見たいものだけを見、信じたいものだけをネットで探すのです。ひねくれた人間は、物体の落下速度は質量によらないとか、光速度は観測者の移動速度によらないとか非常識なことを考えるものです。

アンネを読み終えたら次はMein Kampfを読んでみよう。ドイツでは禁書らしいけど。

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