スカーレット手帖

機嫌のいい観客

真田十勇士 -幕の内弁当化と、戦国におけるくのいち問題-

2014-01-27 | 観劇ライブ記



真田十勇士2014、行ってきました。
日テレ60周年記念舞台ということで、昨年の発表時から身の回りの観劇ファン層が
キャッキャしていた豪華キャスティングのステージでした。


**

配役!!

------

猿飛佐助・・・中村勘九郎
霧隠才蔵・・・松坂桃李
根津甚八&豊臣秀頼・・・福士誠治
真田大助・・・中村蒼
筧十蔵・・・高橋光臣
海野六郎・・・村井良大
三好伊三・・・鈴木伸之
望月六郎・・・青木健
三好清海・・・駿河太郎
由利鎌之助・・・加藤和樹

火垂・・・比嘉愛未
仙九郎・・・石垣佑磨
久々津壮介・・・音尾琢真

真田幸村・・・加藤雅也
淀殿・・・真矢みき
徳川家康※映像・・・平幹二郎
ナレーション・・・坂東三津五郎

------

昨年の上川版真田、そして今回の勘九郎版真田
こんなに短期間で、しかも両方大型の(テレビ局プロデュースの)「真田」が並び立つことは
今後なかなかないんじゃないか? という気がいたします。
嬉々として両方見てしまった私の率直な感想としましては、
上川版真田のほうが、真田ってた。(=おもしろかった)
上川版の感想はコレっす。

なぜそうなんだろう、ということを見ながらいろいろ考えてました。

今回、イケメン八犬伝のときと同じ現象が起こり、
こういう登場人物が多いやつは、幕の内弁当化が防ぎづらいのがつらいところだよなあと思っていたのですが、
案の定という感じで、1幕はメンバーを集めるということでまあ幕が下りたな、と感じました。
(この時点で若干退屈気味)

今回は、真田幸村が主役ではなく、脇を固める猿飛佐助、および霧隠才蔵がダブル主演。
うそもつきとおせば真実になるってもんだ、後世に残る伝説を作ってやろうぜと、
真田幸村を名将に仕立て上げる2名の働きぶりがお話の主軸。
「も~オレって顔がいいから、たまたまうまく行った作戦も策略みたいに取られてこまっちゃうんだよね~」
という切り口は、加藤雅也がやる分にはおもしろいなぁと思ったので、
もっと「プロデュースしている」場面が、コミカルに前面に出てたほうがいいんじゃないかなと思った。
幸村をもっともっと中身のないうすっぺらおじさんみたいなキャラクターにして、
忍の2名が完璧に外向けの顔を作りあげる様子を見せるとかね。発声練習をするとかさ。
プロデュースが前面に出てるのは大坂城軍議のシーンぐらいだったような気がするので。(これはおもしろかった)

で、
主筋としてはその「うそかまことか」真田伝説の仕立て上げと、
それにともなう10名のリクルーティング活動(※必須項目だが幕の内弁当化の要因)、
さらに幸村さんと淀さんの最後から二番目の恋的ななんやかんやアレコレ、
(正直要るんかコレ、という感じだが真矢みき様の眼力がするどすぎて白旗)
というややこしげなお話たちに加え、

あと、もう1本軸になってきているヤンデレくのいちちゃん(火垂(ホタル)ちゃん。演:比嘉愛未)の物語がありまして、
才蔵のことが好きなんだけど、好きが転じて愛憎あいまみれ、いまは敵同士となった背景もあり、
「あの男、アタシ以外には殺らせないよ」となり、おりに触れては
殺そっかな、でも好き、殺そっかな、でも好き、みたいないちゃいちゃをかましにやってくる。
これがアンタ、邪魔!!!  ※個人の感想です。
らぶすとーりーとしてはかわいくてよろしいなと思うのですが、こんなに大勢の物語が走っている中、
全体的に話の流れをぶったぎるところにこの2名のいちゃいちゃシーンが入ってくるもので、
(それに伴って石垣くんの役もちょいちょいちょっかい出しにくる。しかしこの役が強いのかどうかは最後までよくわからん)
どうにもこうにも、物語全体へのドライブがかからんなぁという感じがしました。
そして、最終的にオチたのかがよくわからない。
たしかに才蔵のことを助けてあげるんだけど、才蔵と火垂の場合においては、
恋愛要素は省いておいてもよかったのではないのかな、と思います。
単に有能な技術者としてのくのいちでもよかったのでは、と。
(ていうか、親兄弟を傷つけてまで救うほど才蔵のことが好きなんだな、この子は。と感じられるほどに
 人物描写を深めてもらえてない気がするところがかわいそうなとこでもあるのかな。
 尺は取ってあったような気がするんだけど、あんまりキャラは深まってない印象だった)

というか、今回に限ったことではないのですが、戦国時代に出てくる女子キャラクターは
どうしてもテンプレート的な存在になりやすいと思う。
基本的には姫か、くのいちか、農民の女しかいない。
姫は基本的に囚われの存在である。男の世界を何もわかっていないかと思いきや、達観している場合が多く、
意外とよい解決策を提示したりする。
くのいちおよび農民の女は、好きな男と自分のやるべきこと(殺しor家や村を守る)の間で葛藤することになっている。
農民の女はおとっつぁんとのひと悶着の末、好きな男のもとに駆けて行く場合が多いが、
くのいちは、惚れやすい上にすぐ殺すヤンデレの場合が多い。殺すor愛、という激しい女たちである。

せっかく比嘉愛未ちゃんなどという逸材を連れてきたので、(スタイルばつぐん。美人すぎる。声出てる。)
もう少し捻った何かを見たかった気がする。
ていうか比嘉ちゃんがちょっと、品がありすぎてあんまり忍者なかんじがしない。姫タイプだ。
美しすぎる絶対領域をみせつけてくれたことについては1,000点加算なのですが。
そういう意味では、見るからに腹に一物を抱えていそうな、上川版真田における倉橋カナ(おなじくくのいち)のほうが
なんだかまだよかったかも。


…と、いろいろ申してしまいましたが、
でもでもやっぱり、出演者個々人はとても魅力的だと思いました。
中村勘九郎がお父さんにそっくり!!
声そっくり! せりふまわしもなんかそっくりだと思う!!!江戸ッ子!
なんだかそれだけで感動してしまった冒頭でした。
勘三郎の生芸は見たことがなかった(映像しか)のですが、ぜったいあれは息子に乗り移っていると思う。
ていうかやっぱりうまい。空気を作っている。
あと、冒頭の、各役名乗りのシーンはとてもよいと思った。

<すごいところ>
・やっぱり中村勘九郎の存在感が大きい。貫録がありすぎる。
 ありすぎてなんか他の役者とトーンが違うというカオスが。松坂桃李と同時代に生きてる感じがしない。笑
 でも思ったより松坂桃李もよかった!舞台映えするね。
・加藤和樹の棒振り殺陣のキレがすごい。
 八犬伝の時も棒振り(槍使い)だったと思うんだけど、更にキレが上がっていたような気がする。
 ていうか私はもう、ふつうにけっこうな加藤和樹ファンになってきたのかもしれない。
・二幕中盤の十勇士奮闘(順番に死んでいく)シーンの殺陣はおもしろい。
 回り舞台を活用しながら、何層にも組まれた砦(石垣?)を縦横無尽に駆け回る出演者およびアンサンブルの方々の迫力。

<いまひとつなところ>
・映像が中途半端である。
 大勢が戦に参加している様子が描かれてるんだけど、CGがいまひとつだなぁと思いました。
 かの映画版「梟の城」の冒頭を思い出してしまうような、雑映像が多いなと感じました。
 2階席だったからかな?
・福士くんが、秀頼と二役なんだけど、「ふたりが似ている」っていうのが出てくるのがかなりうしろになってから。
 ちょっともったいない気がしましたね。
 見てる方としては、どういうからくりなのかな?って、そこずっと気になってるので。。。
・謎の平幹二朗御大。完全なる映像出演であったのですが、シュールでした。ちょっと笑いましたね。ゲームみたいで。
 これはこれでいいのかな。
・中村蒼くんは、そうね、うん、もうちょっとがんばれ…!

なんとなく思うに、脚本と演出の相性があまりよくないのかもしれないな、という感じでした。

ちなみに私的なハイライトシーンは、
筧十蔵が由利鎌之助の腕枕で同時に息絶えるところですね。
アッ… うでまくらで死んだ…! って、オペラグラスでガン見でしたね。
いや、べつにBLだからいいってわけじゃないんですけど、
いくつか並走して走っている登場人物の物語の中で、筧十蔵のストーリーが
いちばんわかりやすく、感情移入しやすく、また、
演じている高橋光臣くんがいい感じでなりきっていたのです。おいしい役だね、高橋くん。うまいね、高橋くん。

そして準・ハイライトシーンは
筧十蔵が霧隠才蔵に自分を斬ってくれと言うところですね。
その並びは、梅ちゃん先生だぞっ!

そしてそして村井くんは、脇ながらがんばっていたと思う。役柄的に、オーラは消し気味でした。
やっぱり背は小さいね。「コナン君」とか言われていましたが。(かわいい)
でも侍の役は似合っていると思う。着物が似合う(高貴な装束ではなくて、平民的な着物が)。
村井くんは日テレ系の舞台によく出ているけど、
やっぱり彼がセンターで輝く舞台が見たいなと思いました。自転車部とか、自転車部とかね。自転車部とか。


**

というわけで、
今回も長々とした感想になりました。
(聞いてはいたけど)パンフレットがでかい!! 予想以上に持ってかえりにくい!!!
ということで、トートバッグ付きにしたのですが、
真田六連銭が付いたこのバッグ、帰りの電車でいろんなおじさんの視線を奪っているのを感じました。
なまぬるい歴女宣言とともに、帰途急ぐ私でございました。